研究課題/領域番号 |
20K11304
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
上野 俊明 明海大学, 歯学部, 教授 (30292981)
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研究分担者 |
田邊 元 朝日大学, 歯学部, 助教 (00844341)
林 海里 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (30803192)
中禮 宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50431945)
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脱水 / 熱中症 / pH測定 / 口腔粘膜湿潤度 / スポーツ歯科 / スポーツ科学 |
研究実績の概要 |
スポーツパフォーマンスの最適発揮やコンディション維持、脱水・熱中症事故防止のため、体の渇きを精度よく検出することが重要とされる。本研究ではアクセス容易な口腔から得られるデータのモニタリングに着目し、体の渇きと喉、口の渇きの3者間の時間的、定量的な関係解明に向けた調査研究を行うことを目的としている。 最初に口の渇きを数値した「口腔粘膜湿潤度」の計測検証を繰り返し、測定の規格化を進めた。これに基づいて、起床時の口腔粘膜湿潤度が既存の脱水評価との相関を有することを明らかにし、体の渇きと喉、口の渇きの関連する研究成果を学会発表ならびに論文にて報告した(Chemosensors 2021; https://doi.org/10.3390/chemosensors9080196)。更には、運動前後での身体の脱水指標との口腔粘膜湿潤度の関係を調べ、運動に伴う脱水を口腔粘膜湿潤度で評価できる可能性を明らかにした。その成果は日本臨床スポーツ学会で発表し、現在論文執筆中である。更に、これまで脱水評価が困難であった水泳運動中の脱水評価項目として口腔粘膜湿潤度が有用であることを明らかにした。その成果は日本スポーツ歯科医学学会で発表し、現在論文執筆中である。 また、口の渇きと関連するものとして唾液pHにも着目し、唾液pH を24時間連続モニタリングできるセンサデバイスの開発に取り組んだ。東海大学工学部と共同研究契約を結び、カテーテル型微小pH計を実装したマウスピース型センサデバイスを試作した。まだ運動中の実測にはノイズ処理など解決すべき課題はあるものの、ストレス負荷時の連続測定に成功している。また運動時の実測を見据えて、装置の無線化に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日常生活や運動中の体の渇きに連動して表出する喉と口の渇きの基本的関係を確認し、3者間の時間的、定量的な関係やタイムラグなどを調査するための測定機器のセットアップや開発・改良を進めてきた。 まず着目したものが「口腔内水分計 ムーカス」であり、これを用いた口腔粘膜湿潤度と全身の脱水指標との起床時および運動時における高い関連性を明らかにしてきた。 一方で、唾液pHにも着目していたが、当初購入予定であった唾液モニタリング用pHセンサはトライアル段階で運動中の連続計測が困難であることが判明した。そこで東海大学工学部と共同研究契約を結び、カテーテル型pHセンサを応用したマウスピース型センサデバイスの試作を進めた。安静時の連続測定では十分な時間分解能と検出力(感度)を有する装置を開発することでき、ストレス負荷時の唾液pHの変動を実測することに成功した。一方で、運動時ではノイズ対策や耐久性の確認、サンプリング周波数の最適化等の検討改良が必要である。また、運動時の連続測定を見据え、無線化にも成功した。 これらの知見を活用した軽運動を伴う日常生活レベルにて6名程度の被験者を対象に3日間連続測定は、コロナ禍の影響のためリクルート等の課題があり、現在まで延期となっており、社会情勢を踏まえ進めていきたい。 今回の研究調査から得られた成果は研究者間のみならず、現場の選手やコーチ等に対しても情報発信、還元を行う必要があると考えており、これまで日本陸上競技連盟主催の講習会や日本トライアスロン連合の研究会で研究成果の報告を行ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
アクセスビリティに優れる口腔から収集できる唾液pHや口腔粘膜湿潤度といった各種データの関係性を検証するとともに、脱水指標としての有用性に関する調査研究を続行する。特に体の渇きと喉、口の渇きの3者モニタリング実験に向け、装置の改良や計測手技の規格化を進め、具体的な計画を整備する。マウスピース型pHセンサは運動中計測に関する技術的な課題を東海大学と協力して解決していくが、実装に向けて着実に進んでおり、最終年度で実測段階にまで到達したい。 口腔粘膜湿潤度を活用したフィールド調査も継続する。これまで運動時における脱水の進行を口腔粘膜湿潤度で評価できる可能性を明らかにしており、現在論文執筆中である。最終年での論文発表を予定している(2報)。更に、軽運動を伴う日常生活レベルにて6名程度の被験者を対象に3日間連続についても進めていきたい。InBody計測から身体組成データを得た上で、飲食や運動、睡眠といった生活イベントのほか、心拍や身体活動量などをスマートウオッチにて記録し、これらと口腔粘膜湿潤度や唾液pHとの連動性を分析する予定である。 こうした研究調査から得られた成果は研究者間のみならず、現場の選手やコーチ等に対しても情報発信、還元を行う必要があると考えており、これまで日本陸上競技連盟主催の講習会や日本トライアスロン連合の研究会で研究成果の報告を行ってきたが、最終年も継続して成果報告を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の社会情勢を鑑み、一部の研究計画を延期したため。
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