研究実績の概要 |
1.TRIC 我々は小胞体からCa2+を放出するリアノジン受容体2型(RyR2)とその放出を補助すると考えているTRIC-Aチャネルの相互作用を示唆する論文を共同研究の成果として2020年に報告した。TRICにはTRIC-A, TRIC-Bの2つのサブタイプが存在するが、RyR2と共発現させた場合、RyR2のチャネル活性を変化させるのはTRIC-Aのみである。そこでRyR2とTRIC-Aチャネルが直接的に相互作用するかどうかを表面プラズモン共鳴(Biacore)法を用いて検証を試みた。高純度に精製したTRIC-A(コントロールとしてTRIC-B)チャネルをセンサーチップに固定して精製RyR2をその表面に流して両者の結合を比較した。我々の予想ではTRIC-AのみでRyR2との特異的結合を観察できるはずであったが、TRIC-A, TRIC-B両タンパク質とRyR2との結合は違いが見られなかった。考えられることは、1.TRIC-A, TRIC-BとRyR2との結合に差はない、2.差はあるが我々のBiacoreの条件では検出できなかった、のどちらかである。今後はBiacoreの条件を変えてやり直す予定である。たとえば、バッファーの組成を変える、センサーチップへの結合をRyR2にする、などである。 2.MG23 MG23は小胞体膜と核膜に存在する陽イオンチャネルであり、カルシウム透過性も確認されている。Mg23ノックアウトマウスの単離心筋細胞でのカルシウム動態を検討したところ、静止カルシウム濃度の上昇が確認された。Mg23ノックアウトマウスは心毒性がある抗がん剤ドキソルビシンに対しての生存率が高いこと、ドキソルビシン心毒性にはカルシウム変動も関わっていることから、今後さらに詳細な検討を予定している。
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