我々はTRIC-AおよびTRIC-Bは、小胞体膜の電荷平衡化を可能にするカウンターイオン電流を提供すると提唱している。TRICチャネル活性の解析は、精製の困難さ故に進んでいない。従って、なるべく高発現している組織を選択して遠心分離のみで粗精製した膜タンパク質を用いてチャネル活性を測定した。この方法で解析をする場合、TRIC-AもしくはTRIC-B単独で高発現している組織(細胞)が必要である。そこで、マウスTRIC-AまたはTRIC-BをHEK293細胞でマウスRyR2と共発現させ、これらの細胞から膜小胞を二重層に取り込んだ後、TRICチャネルの透過性とゲート特性を明らかにした。TRIC-AまたはTRIC-Bを含む膜小胞を大量に融合した二重膜の反転電位は、Cl-とK+の両方の透過性を示し、TRICチャネルは比較的非選択的なイオンチャネルであることが示唆された。小麦胚芽無細胞系で発現させたTRIC-Bチャネルは、HEK細胞でRyR2と共に発現させたTRIC-Bと非常に類似した透過特性を示し、2つの異なる実験系で同様のTRIC-Bの透過活性が確認できた。 今回の実験は、TRICチャネルが陰イオンと陽イオンの両方を透過する非選択的イオンチャネルである可能性を示唆している。この特性は今までわれわれが主張していたTRICチャネルがK+を透過させることで小胞体を横断するカウンターイオン電流の効率的な経路であるということを否定するものではない。何故なら、K+のみを透過させるだけでなく陰イオンと陽イオン両方の経路として機能する能力は、より多様な細胞タイプに適した、より柔軟なカウンターイオン電流を提供することが期待されるからである。
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