研究課題/領域番号 |
20K11308
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中村 哲也 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 准教授 (10712284)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スポーツ史 / 日本 / 野球 / 暴力 / 体罰 / しごき / 上下関係 / 篩い落とし |
研究実績の概要 |
2021年度は、野球部内の体罰・しごきの実態や、それが発生する要因である部・チームの上下関係や活動の実態、さらには、それをもたらした野球界の状況を構造的に解明するために、昨年度に収集した史料を網羅的に読解した。また、2021年10月、および2022年3月の2度にわたって東京(早稲田大学図書館、早稲田大学大学史資料センター、野球殿堂博物館、国立国会図書館)で史料調査を行い、昨年度には入手することのできなかった史料も追加で収集を行った。 史料読解、および分析の結果、日本の野球界における体罰は、戦前から存在していたが、多くの高校・大学に広がったのは戦後になってからであることが分かった。世代別にみると、1920年代生まれから、部内で体罰を受けはじめ、1950年代生まれの選手は大半が暴力を受けた経験をもつことが分かった。高校・大学時代に暴力を受けた選手たちが、プロになってから暴力を用いて後輩や選手を指導したり、小学生や中学生の指導にも拡大していったことを明らかにした。 また、同じチーム内で体罰が行使されることになった背景には、多すぎる部員を「篩い落とす」ことが目的の一つであることも解明した。体罰やしごき、厳しい上下関係を理由に多くの部員が退部したが、それでも残った部員たちによって部の活動が継続し、戦後日本の高校・大学野球部は、暴力を苦にしない/暴力に親和的な性向を持つ人々の集団となっていった。 野球部内でのこうした慣習は、大量入部・大量退部を前提としたチームマネジメント手法として日本中に拡大した。しかし近年は少子化等を理由に競技人口が減少してきているため、指導・マネジメント方法の転換が求められるようになり、体罰やしごき等を用いした指導方法の問題が認識されるようになっていった。 こうした研究成果を2022年2月に行われたスポーツ文化研究会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度の史料調査及び史料の読解・分析は当初の計画よりもスムーズに進行し、大半の史料の読解を終えることができた。今後は、これまでの研究成果をまとめるとともに、論文・著書・学会・研究会等で研究成果を公表することに重点を置いていく。
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今後の研究の推進方策 |
・研究成果を単著にまとめることを前提として、出版社との交渉を進める。 ・研究成果を単著としてまとめていく中で、不足している史資料の収集については、必要に応じて適宜実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言・蔓延防止等重点措置の発令により、計画的に史料調査を行うことが困難であったため、次年度使用額が生じることとなった。
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