研究実績の概要 |
本研究計画ではアスリートの心理相談における彼らの心理的問題に対する新たなアセスメントの方法や分類基準(観点)を提示するために、”こころの推進力”(心理的エネルギー)の様態に着目し、6つの分類カテゴリーを仮設的に設定していた。本年度は自身の相談事例の面積記録の分析を行うと同時に、特に、国内外の心理臨床領域での診断分類について概観し、”こころの推進力”の様態に着目する立場を再検討した。スポーツ心理学領域での分類としては、Martensによるabnormal behavior, Normal behavior, Supernormal behaviorといった3水準に分ける立場、そしてGardner & Mooreによるスポーツ心理学的多元分類システムにおける4つのカテゴリー(PD, Pdy, PI, PT)がある。そして心理臨床領域では、河合による”主体の有り様”に着目し症状や問題とその解決の方向性を統一的に見ることを指向した立場が注目された。その他多くは心理的問題の病態水準による分類(アスリートの場合は日常生活への影響の程度、他)であった。これらの分析検討より、問題行動(例えば、アスリートでは、スランプ、バーンアウト、競技意欲の低下、ほか)や病態水準(問題の深さ)に基づく分類では、診断、治療そして予後への手がかりを提供する上で限界がある。つまり新たなアセスメントには、問題行動(症状)の特徴を捉えながら、個々の問題行動の背景にある取り組むべき心理的課題や特徴を踏まえそしてさらに、クライエントの心理的あり様を同一の視点から捉えていくことによって、個々の問題行動の特徴的差異への理解が深まることが期待できると考えた。
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