研究実績の概要 |
本研究計画ではアスリートのカウンセリングや心理療法におけるアセスメント(見立て)において、彼・彼女らの”こころの推進力”(心理的エネルギー)の様態(mode of mental driving force)に着目することの有効性について、これまでに担当した自身の相談事例や個人スーパービジョンのバイザーとして関わった一部の事例を分析資料として検討した。本年度はそうした目的での分析を通して当初の目的だけでなく、アスリート固有の相談事例における新たな知見を提示した。特に、競技力向上や実力発揮につながった心理療法的アプローチでの変容過程について、「競技状況での戸惑い」「競技遂行での気づき」「動きの意味の再考」そして「固有の競技スタイルの確立」といった流れを明らかにした。また、アスリートの心理療法過程での彼・彼女らの”動きや身体”への語りはアセスメントだけでなく、その後の相談過程におけるクライエントの内的世界につながる”窓”として位置づけられることや、身体への語りを手掛かりとしたクライエントの分類可能性について示唆した。さらに、一連のアスリートの相談事例の分析によって、心理サポート実践(心理療法)を通して明らかとなった観点をまとめた。そこでは、先述した「つながりの窓としての身体の語り」のほかに、「語りそして表現することでのこころの強化」「主訴として語られる問題からその後の治療的課題が読み取れる」「クライエント理解における因果論から共時論へのシフト」そして「現実適応(競技力向上・実力発揮)と個性化(心理的成熟)の共存そして裏付けの関係性」を明らかにした。これらの研究成果についてはECSS2023,Paris,Franceにて発表し、参加者からの意見を求め、さらにアスリートの心理サポート(カウンセリング、心理療法)の特徴を明確にしていく手掛かりとしていった。
|