研究課題/領域番号 |
20K11317
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 佑介 日本大学, 商学部, 准教授 (00559536)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 体操 / 宙返り / 空中 / 空中感覚 / 視覚 / 眼球運動 / 視線 |
研究実績の概要 |
本研究は,後方かかえ込み宙返り中の視線行動と身体運動を計測し,両者の協応運動の実体を明らかにするものである。体操競技のみならずいくつかのスポーツにおいて実施される後方かかえ込み宙返りに着目した研究である。この研究では体操選手が床面で行うその場での後方かかえ込み宙返りを課題としている。この宙返り中に体操選手が行う視線行動の実体を明らかにしつつ,それと動作や姿勢との関係について検討を進めている。得られたデータはこの運動の技術や視覚系活動の解明に資するばかりでなく,選手が安全に動作を終える(地面へ着地する)ための技術の習得や,競技力向上を目指したトレーニング法の構築につながることが期待される。 令和3年度も新型コロナウイルス感染症が拡大する状況にあったものの,新たな研究計画を立案のうえ,ほぼその研究計画通りに研究を展開することができた。具体的には,令和2年度に導入した研究システムを利用し,令和3年度には実験を展開した。令和3年度当初には,そのシステムを利用した新たな計画に即して倫理審査委員会からの承認を受けた。その後,実験参加者を募り,感染症拡大と安全性に配慮しつつ,全20名の男子体操選手の協力のもと実験を行った。現在は得られたデータを分析する段階にある。 現在までの分析から,仮説通りの結果が得られている。①体操選手が後方かかえ込み宙返り遂行中に2種類の視線移動パターンを実施できることと,②それらのパターンによって後方かかえ込み宙返りの動作や姿勢が異なる可能性が見出されていることである。これらのことを定量的に示すことは,トレーニング現場に科学的根拠を付与する。また,それらのデータはこれまで検討されていない,この運動における視線行動の変化が動作や姿勢に与える影響にまで言及することを可能にする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度には,後方かかえ込み宙返り遂行中の視線行動と身体運動を計測した。この計画は,令和2年度に新型コロナウイルス感染症の影響を受けた進捗状況の遅れを受けて立案された研究計画通りのものである。両者の協応運動の実体を解明するための根幹となる実験を展開できた点において,当初計画からは遅れているものの令和3年度の研究計画を概ね遂行できたといえる。 しなしながら,この実験を遂行する状況のおいても新型コロナウイルス感染症の影響は小さくなく,特に実験対象者である体操選手およびその関係者の協力なしには研究を推進することはできなかった。すべての関係者の協力のもと,新型コロナウイルス感染症の拡大防止に配慮しつつ実験を展開することができたことは,令和3年度の研究成果の根幹であろう。 得られたデータを質的に分析する過程は完了した。具体的な結果として挙げられるのは,先行研究(佐藤, 2008. スポーツ心理学研究)で明かされていた体操選手がみせる後方かかえ込み宙返り遂行中の2種類の視線移動パターンの存在を本研究においても再確認したこと,そのパターンにより動作や姿勢が影響を受けていることである。後者のことを詳細に分析するために定量的な分析を展開するが,そのための基本的なデータ処理も完了した。令和4年度にはすべての分析を終え,研究成果を社会に発信する段階へと移行する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には令和2年度の研究計画の遅れを鑑みて新しく立案された研究計画をほぼ予定通りに展開することができた。そのため,令和4年度においてもその研究計画通りに研究を展開する。 その計画は大きく2つの過程に分けられる。1つは現在取得されているデータを分析し,本研究課題の目的である後方かかえ込み宙返り遂行中の視線行動と身体運動の協応運動に関わる結果を得ることである。もう1つはその研究結果を社会に発信することである。令和4年度前半に前者の過程を終え,後半には後者の過程を経る。 それを推進するために,データ分析を加速するためのシステムを導入しつつ,堅実に研究を展開していく。それにより,本研究課題の最終年度として本研究課題の目的達成を図る。
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