研究課題/領域番号 |
20K11328
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 英治 筑波大学, 体育系, 助教 (70726877)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | coaching / collective efficacy / cohesion / motivational climate / empirical research |
研究実績の概要 |
2022年度においては,本研究で用いる重要な概念の理論的検討と予備調査を行った.まず,Perceived Motivational Climate in Sport Questionnaire-2(PMCSQ-2; Newton et al., 2000)の改訂版(邦訳)について,大学生を対象に予備調査を実施したうえで因子分析(探索的)の手法を用いて尺度の因子構造を確認するとともに内容的妥当性の検証を行った.その後,本調査を行うために尺度の再構成を行い,本調査に使用する尺度を構成した.この成果の一部については,第1回事理一致運動学会にて発表した. 続いて,高い競技レベルを有する大学バスケットボール・チーム(男性)に所属する指導者(コーチ)を対象として,練習中におけるコーチの行動を録画し,既存のコーチング行動に関する尺度であるCoaching Feedback Questionnaire(CFQ; Amorose and Horn, 2000)の邦訳版とコーチのノンヴァーバルコミュニケーション評価尺度(NCSC;島崎・吉川,2012)を参考に観察・評価した.その結果,選手に好意的に受け止められやすいポジティブな発言や非言語的行動の回数は,ネガティブなものよりも多いことが認められた.他方,コーチの「発言」においては,戦術用語や動作に関する言葉,選手を鼓舞するような言葉が数多く発せられていた.また,選手の名前を呼称することで話を届けたい相手を明確化したり,選手との友好的な関係性を築こうとしたりするコーチの意図も看取された.この成果の一部についても,第1回事理一致運動学会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度の研究課題は,まず,collective efficacyとcohesionの経時的な測定,且つ,PMCSQ-2の改訂版(邦訳)についての予備調査と本調査を行うことであった.PMCSQ-2の改訂版(邦訳)の予備調査を経て因子構造の確認と内容的妥当性について検証し,本調査を行うための尺度項目の再構成は完了したものの,調査対象者の選定が不良に終わり,本調査を実施することはできなかった.そのため,調査方法の再検討を踏まえて,2023年度での調査を実施することとする. また,録画した指導者(コーチ)のコーチング行動をCFQの邦訳版やNCSCを参考に観察・評価することも2022年度の研究課題であったが,新型コロナウイルス感染症の影響によって少数のデータ収集にとどまり,十分な検証が行えなかった.本課題については,2023年度においても調査を継続し,データを蓄積する予定である. さらに,コーチング行動に対する選手の認知と指導者(コーチ)のコーチング効力感についての調査(第3の研究課題)は,使用する尺度の内容的妥当性を検討したものの,想定以上にその作業に時間を費やし,実際に調査するには至らなかった.そのため,概念の理論的検討を踏まえたうえで2023年度中に調査を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,第1に,collective efficacyとcohesionを縦断的に調査するとともに,動機づけ雰囲気尺度の開発(PMCSQ-2の改訂版【邦訳】)のための「本調査」を行い,尺度としての信頼性・妥当性を検証する.第2に,2022年度に予定の一部しか実施できなかった「コーチング行動」の観察・評価を積み重ね,併せて,CFQの邦訳版を用いて選手のコーチング行動に対する認知の測定を実施する.第3に,2022年度に未実施であったコーチング効力感尺度(Myers et al., 2005)の邦訳版を用いて,指導者自身が抱くコーチとしての効力感を測定する.以上の調査対象は,PMCSQ-2に関する調査については運動部活動を行っている高校・大学生とし,その他の調査については全日本大学バスケットボール連盟に所属する選手,並びに指導者とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の実施計画であった複数の調査を,調査項目の内容的妥当性の再検討に多分の時間を要したこと及び新型コロナウィルスの影響により,実施することできなかった.そのため,物品費(外付けHDD等),調査に係る旅費,謝金・人件費が予定どおり執行できなかった.また,研究の進捗状況の遅れによって当初予定していた学会での発表を行えず,また,研究打ち合わせを主にオンラインで行ったことから,それらに係る費用を計画どおり支出するに至らなかった. 2023年度においては,「今後の研究の推進方策」に記載したとおり,社会的な状況を考慮しながら実施できていない調査を実施したいと考えている.それにかかる「物品費」に関しては,外付けHDD等の購入に充てる予定である.また,「旅費」に関しては,研究打ち合わせ,学会での成果発表に充てる予定である.最後に,「人件費・謝金」および「その他」に関しては,申請書に記載のとおり,調査協力者への謝金,調査補助費,論文投稿費,英文校正費等に充てる予定である.
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