研究課題/領域番号 |
20K11329
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
前村 公彦 筑波大学, 体育系, 准教授 (40454863)
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研究分担者 |
吉田 拓矢 筑波大学, 体育系, 特任助教 (50821716)
谷川 聡 筑波大学, 体育系, 准教授 (60400660)
吉岡 利貢 環太平洋大学, 体育学部, 教授 (60508852)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オーダーメイドトレーニング / 疾走動作 / 外的負荷 / 内的負荷 / 事例研究 / 縦断的研究 |
研究実績の概要 |
本研究では,個人の形態的・体力的特性に応じた「オーダーメイド型疾走能力向上プログラム」の開発を目指した実践的研究を行うことを目的とする。この目的を達成するために,本研究では、個人の形態的・体力的特性が疾走能力および疾走動作に及ぼす影響(2020年度),個人の特性に応じた疾走動作評価モデルの構築(2021年度),個人の特性に応じたオーダーメイド型疾走能力向上プログラムの実践(2022年度)について,大学陸上競技部のトレーニングに実践的に介入して検討する。 2021年度は,研究1として,事例的に陸上競技短距離選手におけるトレーニング経過に伴う疾走動作の変動について検討した。その結果,疾走速度が最も高値を示した試技においては,股関節の伸展速度が大きく,接地時に膝関節は伸展位であり,離地時の膝関節も大きいことが明らかとなった。また,接地時の両大腿の角度差と,疾走速度,ストライドおよびピッチとの間に有意な相関関係が認められたことから,パフォーマンスに大きく影響する要因であることが明らかとなった。また,研究2においては,同じく事例的に,陸上競技短距離選手の専門的準備期から試合期におけるトレーニング中の疾走速度測定を縦断的に行い,GPSデバイスを用いた外的負荷の定量化方法を提案するとともに,外的負荷とパフォーマンス,内的負荷を示すコンディショニング変数との関連を縦断的に検討した。その結果,GPSデバイスを用いて定量化される外的なトレーニング負荷と,パフォーマンス,そして内的な負荷を示すコンディショニング指標との関係性を事例的に明らかにすることができた.さらに,GPSデバイスに加え,主観的なコンディション評価,そして神経筋疲労の評価を並行して行うことで,より包括的なトレーニングが実施できる可能性が事例的に示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,2021年度は,MRIを用いた形態的特徴と疾走動作との関係について検討する予定であったが,コロナ禍の影響からMRIを使用した実験が困難となり,当初2022年度に検討予定であった,「個人の特性に応じたオーダーメイド型疾走能力向上プログラムの実践」に関する実験を2つ行った。上述した通り,研究1では,陸上競技短距離選手におけるトレーニング経過に伴う疾走動作の変動について,研究2では,陸上競技短距離選手の専門的準備期から試合期におけるトレーニング中の疾走速度測定を縦断的に行い,GPSデバイスを用いた外的負荷の定量化方法を提案するとともに,外的負荷とパフォーマンス,内的負荷を示すコンディショニング変数との関連について明らかにすることができ,トレーニング現場に対して有益な知見を得ることができた。先行研究において,個人を一定期間に渡り追跡調査をし,個人内での疾走速度と疾走動作との関係を検討し,疾走速度に影響を及ぼす技術的要因は個人間で異なることを示唆している。また,このような縦断的分析手法を用いた研究には,事例研究が挙げられ,その重要性が指摘されていることや,縦断的分析手法を用いて個人内での技術的要因の検討を推進していく必要性も指摘されている。しかし,事例研究への取り組みが活性化しているとは言い難く(森丘,2014),また,加藤ほか(2011)の指摘しているような,これまで横断的に得られた知見と個人を縦断的に分析した知見とを統合するには至っていない。その背景の一つには,縦断的な事例研究への取り組みまたは報告が不足していることが考えられる。このようなことからも,本年度実施した研究において,現場で求められている課題に対して,客観的データを元に検証することができ,スポーツ科学の分野において,有益な情報を提供することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度において,加速局面および中間疾走局面における走動作を分析したことによって、各局面における骨盤の挙動とステップ変数、地面反力および力積との関係について明らかにでき、骨盤の挙動を意識した下肢動作の改善およびトレーニング法などの知見を得ることができた。また,2021年度は,個人の特性に応じたオーダーメイド型疾走能力向上プログラムの実践に関する実験を行い,事例的に,一定期間に渡り追跡調査をし,個人内での疾走速度と疾走動作との関係を検討し,疾走速度に影響を及ぼす技術的要因は個人間で異なることが明らかとなった。今後(2022年度)は、2021年度,実施することができなかった,骨盤の形態的特徴が下肢の形態的特徴,さらには、疾走動作に及ぼす影響について検討する。 形態測定は、身長、体重、体脂肪、除脂肪体重、身体各部の周囲径、下腿長、大腿長、アキレス腱長を測定し、MRI撮影により、骨盤の形態特徴と下肢の腓腹筋、ヒラメ筋、大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋群、大腰筋の筋横断面積を測定し,これらと疾走動作との関係について明らかにし,個人の特性に応じた疾走動作評価モデルの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度,コロナ禍の影響で実施できなかったMRIの撮像に関わる経費を2022年度に使用する予定である。また,予定していた学会への参加がすべてオンライン開催となったため,予定していた経費を消化することができなかった。2022年度は,MRIの映像を分析するための,PCおよびソフトを購入する予定である。
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