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2020 年度 実施状況報告書

筋疲労からの回復期において,受動的張力の増加は能動的張力の増加を誘起するか?

研究課題

研究課題/領域番号 20K11335
研究機関広島大学

研究代表者

和田 正信  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (80220961)

研究分担者 渡邊 大輝  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 助教 (30823281)
松永 智  宮崎大学, 教育学部, 教授 (70221588)
矢中 規之  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (70346526)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード受動的張力 / タイチン / 筋疲労 / リン酸化
研究実績の概要

筋細胞を伸張した際に発生する張力は「受動的張力」と呼ばれ,筋原線維に存在するタイチンがその源である.研究の目的は,一過性の筋収縮が受動的張力に及ぼす影響を検討することであった.実験には,Wistar系雄性ラットを用いた.片脚の腓腹筋 (S群) に,張力が初期値の50%に低下するまで,電気刺激による収縮を繰り返し負荷した.その後,腓腹筋をからskinned fiber (形質膜を除去した単一筋線維) を作製し,受動的張力を測定した.なお,刺激を負荷しない脚をコントロール (C群) として用いた.
C群と比べS群では,受動的張力に約30%の低値が観察された.酸化型グルタチオン (GSSG) および ジチオトレイトール (DTT) で処置したところ,S群とC群の両方において,受動的張力はGSSG処置で低下,DTT処置で増加すること,また,その変化率には両群間に差異はないことが認められた.また,プロテインキナーゼCα処置では,C群では変化しないが,S群では増加することが観察された.
これまで,一過性の筋収縮によって,心筋では受動的張力が増加することが報告されているが,骨格筋における変化については不明であった.本研究の結果は,心筋とは異なり骨格筋では,筋疲労に伴い受動的張力が低下することを明示するものである.また,その要因は,プロテインキナーゼCαによるタイチンのリン酸化の程度が低下するためであることも示唆された.近年,受動的張力は,(アクチンフィラメントとミオシンフィラメントによって発生する) 能動的張力に影響を与えることが示されている.この知見からは,繰り返し行われる収縮により招来される能動的張力低下の要因の1つが,受動的張力の低下にあることが推察される.今後,この点について検討する必要がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまで本研究室は,主として能動的張力の変化を対象に研究を行ってきた.受動的張力についての研究に取り組むのは今年度が最初であり,その測定法の確立(サルコメア長の測定,微小張力の測定等)に時間を要することが予想された.しかしながら,予想よりも早く安定した測定を行うことが可能となり,当初予定した以上の研究(受動的張力低下の要因の解明)を行うことができた.

今後の研究の推進方策

Length-dependent activation (LDA) とは,筋長によって能動的張力が変化する現象を指し,サルコメア長が増大すると,筋原線維Ca2+感受性が増加することなどがその例である.LDAのメカニズムの詳細は明らかではないが,近年,タイチンによって発生する受動的張力の変化が関与していることが示唆されている.上述のように本年度の研究において,筋疲労に伴い,受動的張力が低下することが明らかになった.このことからは,安静時の筋と比べ筋疲労が生じている筋では, LDAの様相が異なることが推察される.今後は,筋疲労が受動的張力および筋原線維Ca2+感受性に及ぼす影響を検討し,この点について明確にする予定である.

次年度使用額が生じた理由

実験が順調に進んだため,試薬代が当初の予定より安くすみ,次年度使用額が生じた.翌年度分として請求した助成金と合わせ,消耗品の購入に使用する予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 筋疲労が受動的張力に及ぼす影響2021

    • 著者名/発表者名
      石 佳瑜
    • 学会等名
      第28回運動生理学会
  • [備考] 広島大学 総合科学部 和田研究室

    • URL

      http://home.hiroshima-u.ac.jp/wada/index.htm

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公開日: 2021-12-27  

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