研究課題/領域番号 |
20K11343
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
石渡 貴之 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (40435235)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 体調不良 / 生理指標 / 脳内神経伝達物質 / 情動行動 / 暑熱環境 |
研究実績の概要 |
近年,地球温暖化が世界中で問題となっており,熱中症による健康被害が増加している.また,体調不良時には熱中症になりやすいことが経験的に認識されているが,その詳細なメカニズムについては明らかになっていない.そこで,本研究では,生体リズムの乱れに伴う体調不良が暑熱環境下での生理指標(深部体温,心拍数,活動量),脳内神経伝達物質(セロトニン,ドーパミン,ノルアドレナリン),不安様行動,認知機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている.2021年度は「暑熱環境下での体調管理に関する暑熱順化の効果検証」を行った.実験には雄Wistarラット(6週齢)を使用し,4週間飼育した.4週間の飼育は,2020年度の不規則明暗サイクル群(不規則な6h:6hの明暗サイクル)と同条件とし,同時に,暑熱暴露(32℃)が可能な人工気候室内で暑熱順化も行った.暑熱順化は,毎日1時間暑熱暴露をする群,3時間暑熱暴露をする群,6時間暑熱暴露をする群の3群に分けて実施した.4週間の飼育後に3時間の暑熱暴露実験を行い,その2日後に,行動実験を行った.まだ分析の途中だが,現在までのところ,暑熱順化の効果を得るには毎日1時間の暑熱暴露では少なく,最低でも毎日3時間暑熱暴露をすることが必要だと分かった.また,研究室の過去の論文(Nakagawa et al., 2016, 2020)の結果と同様に,暑熱順化により深部体温,心拍数の低下が認められ,不安様行動の抑制も認められた.更に,物体認識においても不規則明暗サイクルの影響が軽減する結果が見られている.暑熱暴露中の脳内神経伝達物質については,毎日の暑熱暴露時間が多いほど,放出量が多く,体温も上昇しにくい傾向が見られている.これらの結果は不規則明暗サイクルに対して,日々の暑熱暴露またはその後の暑熱順化が体温調節,不安様行動,認知機能に効果的であることを示唆している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今のところ,ラットの飼育を始め,生理指標,脳内神経伝達物質,情動行動の測定が研究計画通りに問題なく実施することが出来ているため.
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画通り3年目となる次年度は,暑熱環境下での体調管理に関する自発運動の効果検証を行う. 実験動物は体調不良ラットを用いる.無線式小型体温計,マイクロダイアリシス手術は基本的に2021年度と同じ条件で行う.自発運動は自発運動が可能な回転かご付きケージ内で1ヶ月間行い,1日に6時間自発運動が可能な群,12時間自発運動が可能な群,24時間自発運動が可能な群の3群に分ける.1ヶ月の飼育後に3時間の暑熱暴露中の生理指標,脳内神経伝達物質の経時的変化を測定し,その2日後に,不安様行動と認知機能の測定を行う.最終的に,2020,2021年度に行ったデータとの比較を行い,熱中症予防に対する暑熱順化や自発運動の効果を明らかにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症の影響で国内外の学会参加が出来なかったこと. (使用計画)残額は物品費及び学会参加費に割り当てる予定である.
|