我々は、関節組織は常にメカニカルストレスにさらされていることから、軟骨細胞と半月板細胞には関節機能を維持するためにメカニカルストレスに応答する防御機構が存在するのではないかと考え、一連の研究を続けてきたが、関節変性機序におけるメカニカルストレス応答には未だ解明すべき課題も多く、メカニカルストレス応答の調節機序とストレス防御機構は未だ不明な点も多かった。本研究では、関節変性機序をメカニカルストレスに応答した細胞エネルギー代謝の変化と軟骨細胞DNA損傷修復調節機構の変化の観点から明らかにし、さらにメカニカルストレス応答および防御機構の知見を基に関節組織の予防・治療法開発の基礎的データが得ることを目的に進めてきた。本研究成果から、軟骨細胞と半月板細胞において、メカニカルストレスに応答したDNA損傷修復酵素の調節機構は防御機構として働くも、ストレスに抗しきれなくなって防御機能が低下すると、関節支持組織としての軟骨と半月板は変性が進行していくことを示唆する知見を得た。さらに、メカニカルストレスに応答した軟骨及び半月板由来細胞からの活性酸素の過剰産生が、DNA損傷および修復酵素活性化に影響すること、細胞エネルギー代謝(ATP産生・解糖系-ミトコンドリア電子伝達系)の調節機構の変化が軟骨・半月板変性の誘因となり、DNA修復調節機構と 細胞エネルギー代謝調節因子の相互作用・ネットワークがメカニカルストレス感受・応答機構として、組織の恒常性維持に重要な役割を担うことを確認した。
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