前頭葉のもつ判断や、認知、情動といった機能が運動により影響を受けることが分かってきている。本研究では、非侵襲的な脳機能イメージング手法を用いて、運動の強度が抑制機能にどのような影響を及ぼすか解明することを目的としている。令和4年度は、NIRSを用いてGo/No-go taskによる運動抑制機能が30%強度の低強度の運動により、どのような影響を受けるのか実験を行った。被験者には、二つの実験(安静条件・運動条件)を行ってもらった。安静条件では、まず安静時にGo/No-go taskを行い、そのまま15分間座位のまま安静状態を保ってもらい、その後再びGo/No-go taskを行った。運動条件では、安静条件同様にまずGo/No-go taskを行った。その後、10分間の自転車運動を行ってもらい、その後再びGo/No-go taskを行った。このときの運動強度は、カルボーネン法を用いて設定した30%強度とした。実験の結果、Go刺激に対する反応速度や誤答率に安静条件、運動条件で有意な差は見られなかった。しかしながら、NIRSにより測定されたNo-go反応において運動条件では運動前より運動後の方が有意に反応が大きくなるという結果が得られた。一方で、安静条件においては安静の前後で有意な差は見られなかった。このことは、30%強度という低強度の運動でも、運動抑制に関わるような部位の酸化ヘモグロビン濃度を増加させることを示しており、運動抑制機能に関する軽運動の影響を示唆するものである。
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