本研究の目的は、身体座標値および速度を計測する最新デバイスの精度を検証し、各デバイスのタイプ別適用範囲や留意点を提示することであった。本年度は近年急激に開発が進んでいるマーカーレスモーションキャプチャーに関して、その元となる骨格推定利用の可能性を検証するとともに、光学式モーションキャプチャーとの比較を行った。 その結果、ディープラーニングを用いた骨格推定モデルは、複数人物の同時推定や、リアルタイム化、推定速度の高速化等が主な開発の目的としており、スポーツバイオメカニクスで求められる、単一人物の正確な関節位置推定を目的としたものはなかった。また、モデルが学習に用いたデータセットはいずれのも、ソーシャルメディアの動画に映る人物の関節中心と思われる位置をデジタイズしたものであるため、バイオメカニクス分野での利用時には注意が必要であることが分かった。しかし、カメラの台数や配置がその運動に適したものになっていれば、身体運動の状態の単純な識別などのためにはマーカーレスモーションキャプチャーが十分活用できることが明らかになった。また、関節角度などのキネマティクス変量については、光学式モーションキャプチャーと比較して数度の誤差はあるものの、概ね系統誤差と言えるものであったため、目的によっては補正をすることによって活用できる可能性が示唆された。 一方、これまでの知見と先行研究をまとめ、「コーチングのためのバイオメカニクス関連機器の活用ガイドライン」を作成した。
|