研究課題/領域番号 |
20K11355
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
笹瀬 雅史 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (50250907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地方創生 / ビーチボール / 富山県朝日町 / 新型コロナウィルス / スポーツツーリズム / 交流人口 / 普及 / 活性化 |
研究実績の概要 |
2021年度は昨年度に続き新型コロナウィルスが全国に蔓延した。そして国民の生活、経済、教育、スポーツに多大な影響を与えている。本研究も現地調査の計画に困難を伴い、当初の計画が遅れることになった。今年度は主に2つの作業を実施した。 (1)スポーツによる地域づくりの実践例の全国的動向と特徴をまとめ、先行研究の整理を行った。現在、スポーツ庁は「スポーツを通じた地域活性化」をミッションに掲げて「持続的に実現できる体制を構築」し「優良な取組をモデルケースとして広めていく」ことを重要視している。近年報告された優良な事例をまとめて分析した。その傾向は、①都市・自治体のプロスポーツの運営、②スポーツ合宿などツーリズムの誘致、③スポーツ施設を含む多目的施設の運営、④スポーツ団体の自立と地域連携、⑤自然環境を生かした野外スポーツ、⑥障がい者スポーツの国際イベントの開催などである。これらは成果をあげる一方で、都市の人口やイベントの来訪人口に依存度が高いこと、当該地域の住民のスポーツ活動や生活との関係が希薄な傾向があることを指摘した。 (2)富山県朝日町のビーチボールの調査研究を継続した。コロナ下で訪問調査が十分に行なえず、郵送による質問紙調査を併行した。ビーチボールの誕生の過程、ルール制定、団体の組織化、大会の開催、普及定着の実態が明らかとなった。他方で朝日町は人口減少、高齢化に伴うビーチボール愛好者の減少を課題としてあげた。愛好者減少は大会継続の困難や経済効果の減少をもたらす心配がある。近年は、60歳以上の大会の参加者は増加傾向であるが、18歳以上の大会の参加者は減少傾向である。さらに大会運営者の高齢化、審判員の減少も課題である。このことから若い世代の獲得が課題であり、世代間継承や持続可能性が課題となっている。またコロナウィルスの影響で大会や行事が2年間中断されている。今後の再開が課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に続き2021年度も全国的なコロナウィルスの蔓延状況下にあった。地方自治体では継続的に実施していたスポーツイベント、スポーツ大会を中止せざるを得なかった。また、地域の住民が集うスポーツ活動そのものも大きく制約されていた。本研究の調査対象地ある富山県朝日町、北海道の壮瞥町、大樹町、釧路町においても、スポーツ活動が制限されていた。具体的な活動が十分な形で実施されないことがあり、調査を次年度に延期せざるを得なかった。そのため当初予定の研究計画に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、人口減少と地方消滅が進行する社会変化の下で、地方市町村が考案した「地産型スポーツ」の創造・展開過程と、それが住民生活と地域活性化はたす機能を実証的に解明し、スポーツによる地方創生の可能性を検討することである。 2022年度の研究計画は次の2つから成っている。(1)全国各地で展開される地域スポーツの実態を全国的な視点から把握して、その動向と特徴を明らかにする。行政機関やスポーツ団体の調査を行う。 (2)富山県朝日町のビーチボールの実地調査を中心とする。町とスポーツ団体及び住民への聞取り調査、質問紙調査を実施する。そこで歴史と現状、課題についてあきらかにする。併せて他地域への普及と影響を検討するために、他の地域の団体を対象に調査を行う。 具体的な調査計画(対象、項目)について記載する。①対象:富山県朝日町。役場、教育委員会、ビーチボール協会。町内地区の活動に参加し、住民への定着と効果について聞取りと質問紙調査を行う。②地域の自然・歴史・現状の把握。③ビーチボールの考案の経緯。④普及展開の過程。町内および町外への普及の取組み。施設、用具など整備の過程。⑤全国規模の大会の経緯と意義。⑥団体設立と組織化。朝日町、富山県、全国的な団体組織化の経緯と事業、成果。⑦住民・団体・行政の関係性を検討する。⑧継続要因、定着状況と住民生活のQOL向上の関係。⑨スポーツツーリズムの役割の検討、交流人口や関係人口への影響。⑩世代交代の課題。を実態調査に基づいて検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も新型コロナウィルスの影響のために、計画していた富山県や北海道などへの訪問調査を延期することとした。そのため調査旅費などの助成金の使用が少額となった。これまで未実施であった研究計画を2022年度に実施する予定である。
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