研究課題/領域番号 |
20K11356
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
國部 雅大 筑波大学, 体育系, 助教 (70707934)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 頭部運動 / 両眼眼球運動 / スポーツ / 運動学習 / 運動制御 / 両眼視 / 周辺視野 / エイミング |
研究実績の概要 |
本研究課題では、スポーツの場面でみられる巧みで優れた運動を制御および学習する上で、両眼眼球運動と頭部運動の協調性がどのように貢献しているか検討することを目的とした。研究2年度目は、各種スポーツ選手を対象として両眼眼球運動を測定するとともに、投げる、捕る、打つ動作など、実際の運動場面でみられる動作を行う際の両眼眼球運動や頭部運動の貢献について検討を行った。 まずエイミング課題として、目標とする位置へ向けての正確な運動が求められるダーツ投げ課題を用い、長期的な経験を有する者と未熟練者を対象に、正確なエイミングを行う際の両眼眼球運動における特徴について比較検討を行った。両眼眼球運動データから算出した輻輳角(注視距離)を検討した結果、ダーツ経験者はダーツ未熟練者に比べて、ダーツボード注視時の輻輳角よりもダーツ課題遂行中の輻輳角がより小さくなる(注視距離がより長くなる)傾向が観察された。このことから、的の中心に向けてダーツ投げを実際に遂行する際には,同じ距離から的への注視のみを行う(実際に運動を伴わない)場合と比較して「より遠方に視線を向ける」ような注意の向け方となっていたことが考えられる。 また、ブラインドサッカーにおいてボールを捕る技能の学習に頭部回転が与える効果を検討した。運動課題は、アイマスクを装着した状態で4.5m先から左右に転がるボールを右足でトラップする課題を設定し、2日間の学習期間を設けた。その結果、ボールが足に触れるまで顔でボールを追うことを意識した参加者において、ボールトラップの空間誤差が学習後により減少した。また、これらの参加者における下向きの頭部角度は、左右に移動してボールの軌道に入ることのみを意識した参加者と比較して大きかった。これらの結果から、大きな下向きの頭部回転を用いて音源をより正確に定位することで、ボールトラップ技能が向上する可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年度目は、各種スポーツ選手を対象に、実験室内にて両眼眼球運動の測定を行った。これに加え、屋外フィールドにて頭部運動や注視行動の測定を実施することができた。これまでに得られたデータのうち一部は分析が完了していないため、今後分析を進めていく。特に、屋外のフィールドにおいて両眼眼球運動と頭部運動を同期測定する方法については、今後より良い方法を検討していく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
研究3年度目は、前年度に引き続き、球技スポーツ選手を対象とし、素早く正確に送球や捕球動作、ボールを打つ運動を行う際の眼球-頭部-手部の協調性と熟練したパフォーマンスの関係を検討するための実験を行う。また、球技経験のない研究対象を対象に、送球、捕球、ボールを打つなどの学習課題を行い、学習に伴う視線-頭部-手部の時間的・空間的な協調性の変化を調査する。これにより、研究対象者のパス動作学習に伴う身体各部(両眼眼球運動-頭部-手部)の時間的・空間的協調性の変化を明らかにするとともに、対人間での素早く巧みな運動技能遂行時の知覚情報処理について検証する。以上の研究をまとめ、スポーツにおける優れた身体運動パフォーマンスの遂行や学習における両眼眼球運動と頭部運動の貢献に関して総合的な検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究打ち合わせや学会発表のための旅費を計上していたが、新型コロナウイルスの影響により旅費の支出がなかった。かわりに、オンライン環境整備のため物品費として当初予定より多く支出したものの、次年度使用額が生じた。翌年度も、旅費としての支出額が予定より少なくなる可能性が高いため、データ分析のための人件費・謝金に経費を使用する計画をしている。
|