本研究課題では、スポーツの場面でみられる巧みで優れた運動を制御および学習する上で、両眼眼球運動と頭部運動の協調性がどのように貢献しているか検討することを目的とした。研究最終年度は、前年度に引き続き、各種スポーツ選手を対象に頭部運動や移動を伴う条件下で素早く正確な運動を実際に行う際の視線行動を測定するとともに、両眼視機能と眼球運動の関係について検討を行った。 まず、大学バドミントン選手8名と競技経験のない学生(非競技選手)8名を対象に、相手からの素早いショットに対して返球する際にみられる視線行動の特徴について検討した。参加者は眼球運動測定装置を装着してコートの前衛ポジションに位置し、相手からの速いショットに対して実際に返球を行った。その結果、バドミントン選手は非競技選手に比べ、相手ショットのインパクト時点を基準とした視線移動開始のタイミングが早く、インパクトより早いタイミングで視線移動を開始している試行もみられた。このことから、バドミントン選手においては、速いショットに対して返球を行う際に予測をふまえた視線行動がみられることが示唆された。 さらに、球技スポーツ選手における両眼眼球運動と両眼視機能の関係について検討した。大学野球選手24名と大学サッカー選手24名を対象に、奥行き方向への注視移動時の両眼眼球運動および両眼視機能を測定した。その結果、両眼の眼位ずれを有する選手は、眼位ずれを有しない選手に比べ、両眼眼球運動がより非対称な特徴を示したことから、両眼眼球運動の対称性と眼位ずれに関係がある可能性が考えられた。 以上、本研究期間全体を通して、各種スポーツ選手を対象に、実際のスポーツ場面でみられる動作を素早く正確に行う際にみられる両眼眼球運動や頭部運動の貢献を明らかにした。本研究成果は、実際のスポーツ動作の制御や学習の場面において実践・応用するための知見となることが期待される。
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