研究実績の概要 |
骨格筋は様々な因子により調節を受け、オートファジー機能不全によりサルコペニア (加齢性筋減弱症)が促進される可能性が高い (Sakuma K, et al., p62/SQSTM1 but not LC3 is accumulated in sarcopenia muscle of mice. Journal of Cachexia, Sarcopenia, and Muscle. 2016)。オートファジー機構を強力に阻害するものとして、最近注目を集めている物質がRubiconである (Nakamura S et al., Nature Commun 10: 847, 2019)。このRubiconはBeclin-1と結合する ことで、ライソゾームとオートファゴソームの合体を阻止する可能性がある。若齢 (3ヶ月齢)と高齢 (24ヶ月齢)マウスの大腿四頭筋を用いた昨年度の蛍光免疫組織染色の実験において、加齢筋におけるRubiconの免疫活性亢進が認められた。加齢筋におけるRubiconの活性亢進の場所は、筋細胞の細胞膜や個々の筋細胞質ではなく、細胞内にパーティクル (小片)上に散在していた。今年度はWestern blot法により、Rubiconタンパク質のさらなる検証を行ったところ、加齢筋において有意な亢進が認められた。この有意なRubiconタンパク質の増加は、他の筋萎縮モデルである除神経においても確認された。また他のオートファジー関連物質であるアペリンについても、蛍光免疫組織染色を行ったところ、加齢筋におけるアペリン活性陽性細胞の割合が有意に減少していた。以上のことから、オートファジー機能を負に制御するRubiconタンパク質の亢進、その機能を正に制御するアペリンタンパク質の減少により、サルコペニアにおけるオートファジー機能不全がもたらされる可能性が示唆された。
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