研究実績の概要 |
骨格筋は様々な因子により調節を受け、オートファジー機能不全によりサルコペニア (加齢性筋減弱症)が促進される可能性が高い (Sakuma K, et al., 2016)。オートファジー機構を強力に阻害するものとして、最近注目を集めている物質がRubiconである 。このRubiconはBeclin-1と結合することで、ライソゾームとオートファゴソームの合体を阻止する可能性がある。これまでの研究で、加齢筋におけるRubiconの免疫活性亢進が認められ、筋細胞内にパーティクル (小片)上で発現していることがわかった。またWestern blot法により、加齢筋においてRubiconタンパク質の有意な発現増加が認められた。またRubiconとは別の段階でオートファジー阻害に関係するTRB3 (Tribbles homologue 3)について調べたところ、若齢筋と比較して加齢筋で細胞質全般に発現亢進が認められた。さらにTRB3抗体を用いたWestern blot法により、加齢筋でTRB3タンパク質が増加していることが確認できた。このTRB3の発現亢進は、他の筋萎縮モデル (除神経)では確認できておらず、加齢筋で特徴的な現象であることがわかった。一方、昨年蛍光免疫組織染色で発現減少が確認されたアペリン(オートファジー促進物質)について、条件 (ブロッキングに用いる溶媒、一次抗体、二次抗体を薄める溶媒、反応液)をかなり変更してWestern blotを試みたものの、予想される高さでアペリンのバンド (blot)が検出できなかった。以上のことから、オートファジー機能を負に制御するRubiconとTRB3の亢進、その機能を正に制御するアペリンタンパク質の減少により、サルコペニアにおけるオートファジー機能不全がもたらされる可能性が示唆された。
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