昨年から取り掛かっていた体幹安定性に関するシステマティックレビューが完成し、国際誌のIsokinetics and exercise scienceで昨年度内にacceptされた。その中で、core strength、core stability、core enduranceの定義が曖昧で、統一した知見として記述するにはこれらの整理が必要であることが明らかになっている。 経験的に我々が使用してきた体幹安定性を確保するための股関節屈筋群への伸張性収縮を利用したactive stretchが、体幹回旋可動域へ及ぼす効果を確認した研究では、エビデンスが得られ現在原著論文として投稿中である。この結果は大腰筋の拘縮が腰椎の可動域を制限して、体幹安定性に悪影響を及ぼしていることを示唆する知見である。この結果を受けて、本手技を介入手段として、体幹回旋筋力に及ぼす影響をRCTにて検討する予定である。 腹圧と回旋筋出力が密接に関係することを検証する研究が昨年度内に完了した。個人内では、腹圧と回旋筋力は、ほぼ相関係数0.9程度の関係があることを示しており、体幹回旋筋 出力は、腹圧にほぼ依存していることを明らかにできた。また集団の中でもValsalva法での腹圧形成能力が高いほど、体幹回旋筋力が有意に大きいことを示し、少なくとも体幹回旋筋力発揮に関しては、腹圧が大きく関与することを提示できた。この結果は既に国際誌に投稿中である。 さらに、ラグビー選手を対象とした頭部の持久力と胸部の後弯(レントゲンでの下部頚椎の俯角)を、関連付けた研究を昨年度内に完了し、胸椎後弯は頭部コントロールを阻害するという仮説を検証するためにデータを分析中である。これは、体幹安定性と脳震盪発生が関連していることを検証する目的も含んでいる。
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