研究実績の概要 |
本研究は,骨格筋の固有の硬さと筋機能ならびに競技成績との関係性を検討することを目的とした.大学生男子長距離選手22名(18.6±0.8歳)ならびに大学生男女ウエイトリフティング選手23名(19.7±1.1歳:男性10名,女性13名)を対象とした.超音波診断装置(HS2,コニカミノルタ社製)に搭載されたエラストグラフィー機能を用いて,利き足側の腓腹筋内側頭の硬度を測定した.なお,筋の硬度は硬度基準物質である音響カプラ(コニカミノルタ社製)との歪み比から評価された.歪み比の計測は,異なる画像を使用して3回実施され,その平均値を筋硬度の値として用いた.次に,ウォームアップ後に,計測ツール(BPAT Jump,スポーツセンシング社製)と専用マットスイッチを使用して,5回のリバウンドジャンプを2セット測定した.計10回のジャンプの中で最も優れたリバウンドジャンプ指数(跳躍高/接地時間)を分析の対象とした.腓腹筋内側頭の硬度とリバウンドジャンプ指数ならびに競技パフォーマンス(長距離選手:5,000mタイム,ウエイトリフティング選手:スナッチ,クリーン&ジャーク,クリーンの挙上重量)の関係は,ピアソンの積率相関係数を用いて評価した.有意水準は5%未満とした.長距離選手ならびにウエイトリフティング選手において,腓腹筋内側頭の硬度はリバウンドジャンプ指数と有意な相関関係を示さなかった.加えて,腓腹筋内側頭の硬度は,長距離選手の5,000mタイムならびにウエイトリフティング選手のスナッチ,クリーン&ジャーク,クリーンの記録とも有意な相関関係を示さなかった.本研究の結果から,長距離選手ならびにウエイトリフティング選手の腓腹筋内側頭の硬さは,ジャンプパフォーマンスだけでなく,5,000mタイムやリフティング記録にも関与しないことが示唆された.
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