運動ストレスにおける上皮由来サイトカインの影響を明らかにするため、年間の変化および季節変動の影響を検討した。対象は陸上長距離のトレーニングを実施している大学アスリートとし、3年間で26名が測定に参加した。測定項目は採血、呼吸機能測定および呼気一酸化窒素 (FeNO)とした。上皮由来サイトカイン(TSLP、 IL-25 、IL-33)は-80℃で凍結保存後、ELISA法を用いて分析した。各上皮由来サイトカインと呼吸器関連因子との関連を検討したところ、TSLPはFeNO(r<0.01)と正の相関関係を認めた。ただし、16検体が検出限界を下回った。 IL-25 はIL-33と正の相関関係(r<0.05)、IL-33は白血球と正の相関を認めた(r<0.05)。FeNO高値群(25ppb以上)と低値群に分け上皮由来サイトカイン及び呼吸器関連因子を比較検討したが、有意な差は認められなかった。年間の変化を確認するため、翌年同時期に測定を行ったが IL-25 (1年目16.4 ± 21.3vs2年目 16.9 ± 19.9 pg/mL)、IL-33 (n=11)(1年目158.4 ±136.2 vs2年目 185.8±133.2 pg/μL)ともに有意な変化を認めなかった(n=12)。尚、検出限界を下回ったデータは分析から除いた。季節変動の影響を検討するため夏季と冬季のIL-33の変動を検討したが変化は認められなかった(夏季206.1±188.7pg/μL vs 冬季243.1±200.4pg/μL)。以上から、アスリートの上皮由来サイトカインの年間の変化や季節変動は認められなかった。一方、上皮由来サイトカインは個人差が大きく高濃度にも関わらず好酸球性炎症や呼吸機能との関連を認めないものもあった。運動ストレスとの関連を明らかにするためには、制御因子を含め検討する必要がある。
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