本研究の目的は,レジスタンス運動や低酸素刺激により分泌が促進される新規マイオカインに着目し,低酸素レジスタンストレーニングがインスリン感受性に及ぼす効果について検討することである.最終年度は,低酸素環境で行う長期間のレジスタンストレーニングが新規マイオカインおよびインスリン感受性に及ぼす影響について検討した. 健常な成人男性18名を常酸素トレーニング群(9名)と低酸素トレーニング群(9名)に分類し,それぞれの環境でレジスタンストレーニング(挙上重量70%1RM,挙上回数10回,セット数5セット,セット間休息90秒,2日/週)を8週間実施した.8週間のレジスタンストレーニング前後の空腹・安静時に採血を行い,apelin,zinc-α2-glycoprotein(ZAG),およびインスリン感受性指数(HOMA-IR)を測定した. 両群ともにトレーニングによるapelinおよびZAGの有意な変動は認められず,群間における有意差も認められなかった.一方,HOMA-IRは両群ともにトレーニング前と比較しトレーニング後で有意に低下した.以上の結果から,低酸素レジスタンストレーニングがapelinおよびZAGの分泌に影響を及ぼさないこと,レジスタンストレーニング誘発性のインスリン感受性増加の程度に影響を及ぼさない可能性があることが示唆された. 研究期間全体の研究を通じて,低酸素刺激が一過性のレジスタンス運動による新規マイオカインapelinの分泌増加を抑制する可能性があること,ZAGの分泌増加の程度に影響を及ぼさないこと,および長期間のレジスタンストレーニングによるインスリン感受性の増加の程度に影響を及ぼさない可能性が本研究により示された.
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