研究課題/領域番号 |
20K11403
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
竹田 正樹 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (00278459)
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研究分担者 |
日和 悟 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (00771247)
廣安 知之 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20298144)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知機能 / ダーツ / 脳血流 / 下頭頂小葉 / 注意機能 |
研究実績の概要 |
若年者21名(平均22.2歳)を対象にウェルネスダーツ中の脳血流をNIRSSport2を用いて測定した.被験者に持ち点を128点としたゼロワンゲームを行ってもらった.被験者には以下の指示に従って投擲をしてもらった.開始から5秒でダーツを持って構えてもらい,5~13秒の間に狙う的を考えてもらう.その後,合図音とともに投擲をしてもらう.矢は3本あり,3投擲目が終了した時点で,3本分の矢の合計点を計算(足し算とかけ算)し,その点数を持ち点から引いて記録紙に記載してもらった.この流れを1セットとし,5セット実施した.5セットの投擲の間,連続的にfNIRS信号を計測した.サンプリング周波数は4.36Hzとした.計測部位は前頭部,頭頂部,側頭部の44CHと,16の短距離CHとした.若年者の脳活動の活性化パターンが左右非対称であるかを側性指標を用いて確認した.また,計画時及び計算時に賦活した領域を特定するために,全被験者の計画時及び暗算時毎に個人解析で算出したコントラスト値の平均を被験者間の分散と被験者内の分散で割ることで被験者群の重み付けを行い,集団的なT値を算出し,1サンプルT検定で確認した.その結果,活性化パターンに関しては,左右非対称であることが確認できた.また,賦活した脳領域に関しては,計画時,計算時とも,関心領域であるMFG(中前頭回),SFGdor(上前頭回背側部),IPL(下頭頂小葉)が賦活していることが確認された.MFGとSFGdorは計算に関わる領域とされる.また,IPLは視覚情報および体性感覚情報に応答するニューロンが多く分布されているとされており,1)道具の使用に関わることと2)注意機能に関わる領域とされる.これらの機能は認知機能と深い関連があることから,ダーツゲームの実施が認知機能を働かせていることが示唆され,認知機能低下予防に貢献できると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため,実験の実施が困難であったが,2020年秋頃から徐々に実験を開始することができ,学生を対象としたダーツ中の脳賦活状態の計測を実施できた.本来であれば,高齢者においても測定したかったが,学外者の研究施設の立ち入りについては許可されておらず,実施には至らなかった.この研究は高齢者における計測が主であるため,その点では1年目はやや遅れた感があるが,それでも学生を対象に24名の計測ができたことは予想以上と捉えている.しかも,仮設通り,ダーツ中の計画時及び計算時に安静時に比較して,活性化パターンに関しては,左右非対称であることが確認できた.また,賦活した脳領域に関しては,計画時,計算時とも,関心領域であるMFG(中前頭回),SFGdor(上前頭回背側部),IPL(下頭頂小葉)が賦活していることが確認された.下頭頂小葉が有意に賦活化していることが確認された. 21年度においては,まだまだ制限の多い中ではあるが,高齢者を対象としてダーツ中の脳賦活状態を計測したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度(2021年度)においては,ダーツを継続的にサークル活動として実施している高齢者を対象に,ダーツ中の脳賦活状態を計測する予定である.実験方法は,本研究で令和2年度に実施した若齢者を対象とした方法と同様で,時間をもとに狙う的の計画,3本のダーツの投擲,その3本の矢に基づく算数計算を,5セット行ってもらい,安静時に対する計画時と計算時の脳賦活状態を計測する.加えてCogEvoというソフトを用いて認知機能テストを実施し,ダーツパフォーマンスと認知機能テストの相関関係を検討する.ダーツパフォーマンスは通常のウェルネスダーツのボードとは異なり,ボードの中央に行くほど点数を高く設定して,高い点数を獲得できたものほどパフォーマンスが高いものと仮定する.被験者は平均年齢70歳くらいの高齢男女30名を目標とし,すべてダーツを習慣的に実施しているものとする. また,新しくダーツサークルに加入し,開始したいという高齢者に対して,ダーツ中の脳血流測定を実施するとともに,CogEvoを用いて,認知機能テストを実施し,3ヶ月毎に同認知テストを実施することで,ダーツトレーニングが認知機能にどのような影響を及ぼすのかについて縦断的評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に関しては,予定していた金額に対してほぼ計画通り執行できたものと考えている. 令和3年度以降は,新型コロナウィルスがいつ頃収束するのか見通しは立っていないものの,可能な限りの感染対策を施しながら,高齢者を対象とした実験を計画しており,その際の人件費(被験者謝礼)としてできるだけ使用したいと考えている.必要な物品,および認知機能評価のためのソフトウェア契約に関しては初年度(令和2年度)にほぼ揃えることができている.消耗品の購入は引き続き必要である. 旅費に関しては,学会出張を想定していたが,所属する学会がほぼオンライン開催に変更になったため,令和2年度の執行はないが,3年度以降,学会によっては対面開催を検討してるところがあり,その場合には,出張旅費を執行したいと考えている.
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