本研究では研究課題を2つ設定した.1つ目がダーツトレーニングによる認知機能の向上の有無を認知機能検査によって評価することであった.2つ目は実際のダーツ課題中の脳賦活部位をfNIRS(近赤外分光法)を用いて測定することであった. ダーツゲーム中の脳血流測定として,fNIRSを用いて実験を行った.被験者は若年健常者21名,高齢ダーツ熟練者21名(2年以上のダーツ経験者),高齢ダーツ未経験者21名とした.それぞれの被験者に対して,狙う的を自身で考え,投げて刺さった3本の矢の合計点の計算(かけ算と足し算)し,持ち点からその点数を差し引く(引き算)通常のダーツゲームパタンと,験者側が狙う的の指示を出し,かつ刺さった矢の合計点の計算や持ち点からの引き算を行う(被験者は何も考えずにただ矢を投げる)パタンの2条件下で,脳賦活状態を計測した. 脳機能が働いている際は左脳及び及び右脳のどちらかの主に働く片側賦活状態が若年者の典型的なパタンとされている.fNIRSの解析結果から,自身で考えながらダーツを行うパタンにおいて,どの的を狙うかを考えているプランニングの際に,高齢のダーツ熟練者は若齢者と同様の賦活パタンとなり,高齢ダーツ未熟練者と統計的に異なる結果を得た.このことは,高齢者に於いてダーツを継続的に実施することは,実行機能の重要な要素である計画時の脳の賦活パタンが若齢者と似かよることを意味しており,ダーツの実施が脳機能の維持向上に役に立つ可能性を示唆するものである. これらの成果を英語論文としてまとめ,投稿中である.一同投稿したが,レジェクトされたため,現在,異なるジャーナルに投稿したところである.
|