研究課題/領域番号 |
20K11405
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
寺田 和史 天理大学, 体育学部, 教授 (40454798)
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研究分担者 |
中谷 敏昭 天理大学, 体育学部, 教授 (60248185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鍼治療 / 鍼通電 / 力調節能 / 遅発性筋痛 / 足関節 / 底屈 |
研究実績の概要 |
本研究では、筋疲労や遅発性筋痛(Delayed Onset Muscle Soreness: DOMS)によって生じるとされる力調節能の低下に対して、鍼や鍼通電の影響を検討している。本年度は、DOMS等による力調節能の乱れを定量化するために必要である、視覚フィードバックを伴う足関節底屈における筋出力の調節課題を行うシステムの開発に注力した。本システムは、椅座位でペダルに見立てたフォースプレートを片側の足関節底屈により押すときの、力の調節様相を記録するものである。力調節能の評価は、視覚課題に対する達成度によって行う。すなわち、モニターに出現する垂直方向に移動する目標物を、ペダルの踏力と連動して同じく垂直移動するレベルゲージで追跡し、目標物とそれに合わせた踏力の誤差を経時的に記録するものである(力合わせ課題)。昨年度までに本システムのソフトウェアについては概ね開発できていたものの、実際のシミュレーションで幾つかの不具合が出てきたため、それを修正した。具体的には、課題の開始時合図の修正、目標物の移動プログラムの修正などである。 また、遅発性筋痛の発生方法、鍼通電の方法についても予備的な検討を行った。遅発性筋痛については、場合により筋痛の度合いに差がみられる可能性が考えられたため、発生方法について幾つかの試行を行った。鍼通電については、どのタイミングで行うことが適切か、また刺激の強度や周波数の最適化について検討を重ねた。 研究期間内に十分な研究成果を得るには、実際にデータを得るための試行をできるだけ早期に行う必要があるが、これらの検討は課題の検証にとって不可欠であり、本年度ある程度の時間をかけることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度に引き続きCOVID-19流行の影響を受け、本来予定されていた研究計画の進捗が滞った。本研究においてデータの取得の際に問題となるヒトとヒトとの接触について、昨年度より対応策を講じられるようになったものの、幅広いデータの収集等については依然困難な状況であった。 さらに、本研究課題に関する研究成果について、昨年度来、学会での発表等を計画していたが、引き続き旅行や移動自粛などの期間が断続的に発生し、それらの活動についても満足に行えなかった。一方、上記のように本研究課題に係るデータ収集がままならなかったこともあり、予定していた発表の機会を得られない場合もあった。ただし、昨年度よりも情報収集をする機会は設けることができ、今年度はその点では少し進められた部分もあった。 本年度は、昨年度と同様に本研究課題に係る資料の収集や、測定に使用するシステムの構築について中心に進めることとなった。特に、力調節能の評価に用いようとしている測定機材やソフトウェアの改良・調整については、業者との間でさらに検討を重ねるなどして進めることができた。具体的にはシステムの不具合の調整、すなわち課題の開始時合図の修正、目標物の移動プログラムの修正などであった。今後は、本システムを用いたヒトを対象とした測定ができるように、COVID-19流行の状況や感染防止対策などの方法を鑑みながら、順次進めていく必要がある。 本年度は、昨年度と同じく活動制限のある中で出来るだけ研究が進められるように最大限努力したが、COVID-19流行の影響は避けがたく、研究の進捗としてはやや遅れている状況であると言わざるを得ない。次年度は、これまでの遅れを取り戻すべくスケジュールを調整し、当初目標としていた研究成果が得られるよう工夫をしたい。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19流行の影響により本年度で進められなかった計画については早急に対応し、且つ研究期間の最終年度であることから、課題の解決について完了できるスケジュールを立て、研究を進めていく。具体的には、本年度までに確立された測定システムを用いた足関節底屈における力調節能の評価法を使い、十分な予備的検討を行ったうえで、元来、本年度までには着手予定であった以下の検討を進める。 対象を「鍼(通電)群」と「無刺激群」に、年齢や体格、筋力などが偏らないように階層化したうえで無作為に割付ける、無作為化比較対照試験を実施する。上記の両群に20度の傾斜板上での踵挙げ運動(エキセントリック運動:ECC運動)を行わせ、実験的にDOMSを発生させる。鍼(通電)群には、力調節能の経時変化をみるために、刺激(介入)の前後における数度の時機において、特別な装置を作成し、それを用いて視覚フィードバックによる片側の等尺性足関節底屈トルクを目標値に合わせる課題を行わせる。さらに、重心軌跡測定器により、立位姿勢制御の評価を行う。鍼(通電)は、DOMSが発生中とみられるECC運動の24時間後に行う。鍼刺激群には、片側の当該筋への2Hz・20分の低周波鍼通電を行う。具体的な刺激点は、委中穴(BL40)と承山穴(BL57)とする。無刺激群は、鍼刺激と同時間による安静をとる。各時点での観察データをもとに、2群を比較する。結果として、鍼(通電)群は無刺激群と比較して、DOMS時の足関節底屈における力調節能や立位姿勢制御能力の低下が抑制されると予想する。 今後もCOVID-19流行の影響を受けることが危惧されるものの、タイミングを見計らい、また感染拡大防止の方法を考慮しながら、当初計画を推進していく。さらには、引き続き学会等での情報収集を行い、研究成果が得られた場合には、積極的に関連学会等で発表を行うことも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行の影響により研究計画の大幅な変更を余儀なくされ、当初予定されていた学会出席による研究動向調査などの旅費、測定対象である研究協力者への謝金、その他研究活動に係る消耗品などの諸経費が生じなかった、あるいは大幅に減額されたことが、次年度使用額が生じた主な理由となる。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、COVID-19の流行の状況を勘案しながら、本年度実施予定であってできなかった計画を順次遂行していくことで、予定される使用額に近い額の使用が見込まれる。具体的には、測定などを行うことによる研究協力者への謝金の発生や、今年度購入していない設備備品などの調達、消耗品の購入、論文投稿や学会発表等の研究成果発表に係る経費などがそれにあたる。
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