研究課題/領域番号 |
20K11407
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
加藤 茂幸 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (20368715)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前十字靭帯 / 有限要素法 / 膝関節 / スポーツ / 再受傷 / 予防 |
研究実績の概要 |
膝前十字靱帯(ACL)損傷はスポーツ活動中に発生する重大な外傷のひとつである。ACLを損傷した選手が再びスポーツ活動を行うためには、ACL再建術を受け、リハビリテーションを経てスポーツ復帰する。しかしながら、スポーツへ復帰した選手のACL再受傷(2度目の損傷:Secondary injury)率は低くない。ACL再建術を受けリハビリテーションを経てスポーツ復帰した選手が再び受傷することは避けなければならない。よって、ACL再受傷(2度目の損傷)の予防策を講じる必要がある。本研究では、再受傷が生じる原因をスポーツ動作解析と3次元膝関節モデルを組み合わせて分析し、動作中の関節内の靭帯へのストレス状況を可視化することを目的とする。 初年度はノンコンタクト損傷が生じる動作のひとつであるジャンプ着地動作の解析を行った。3次元動作解析装置(VICON)にて動的下肢アライメントを測定し、床反力計(AMTI)にて着地時の床反力を測定した。ACL再建後スポーツ復帰を果たしている選手の両脚着地動作では、動作時の関節角度と床反力および着地タイミングに非対称性を認めた。ACL再建術後、スポーツ復帰時に重要視されるのは下肢の対称性であり、動作時の下肢非対称性はACL再受傷(2度目の損傷)のリスクになると考えられた。当該年度は、これらの動作解析データを反映させたコンピュータシミュレーションを実施するために3次元有限要素モデルの構築に取り掛かった。まず、健常膝モデルを構築し、動作時にACLや半月板等へ生じる負荷を算出し可視化した。現在は、健常膝モデルとACL再建膝モデルを比較するために、ACL再建膝の3次元有限要素モデルの構築に取り掛かっている。これらのモデルを比較することで靭帯へ加わるストレスの差異を明確にし、2度目の損傷(Secondary injury)の原因解明へとつなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ACL損傷後スポーツ復帰した選手に再受傷が生じる原因をスポーツ動作解析と3次元膝関節モデルを組み合わせて分析し、動作中の関節内の靭帯へのストレス状況を可視化することを目的としている。そして、健常膝モデルとACL再建膝モデルを比較することで靭帯へ加わるストレスの差異を明確にし、2度目の損傷(Secondary injury)の原因解明へとつなげる。 現在までに非接触(ノンコンタクト)ACL損傷が生じやすい動作であるジャンプ着地動作(Drop Vertical Jump、Counter Movement Jump、Single Counter Movement Jump、Single Leg HOP)の解析を行い、動作時の膝角度と床反力データを反映させたシミュレーションを健常膝モデルにて実施可能となった。 ACL再建後スポーツ復帰を果たしている選手の両脚着地動作においては、動作時の膝角度と床反力および着地タイミングに非対称性を認めることがわかっており、現在は、ACL再建後スポーツ復帰を果たしている選手の動作解析データを反映させた有限要素シミュレーション解析に取り組んでいる。 なお、研究はおおむね順調に進んでいるが、コロナ禍による施設への入構制限があったこと、大学事務の手続きの遅延など、研究進行に多少影響した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様、次年度においてもモデルの構築および解析を実施するうえで工学的専門家(岡山県工業技術センター)の助言を得ながら進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会への参加制限が生じた。また打ち合わせ等も直接会う事は制限された。 次年度はOsiriX MDの解析速度を向上させるためにMacBook(8コアCPU、8コアGPU、Apple M1チップ)計上する。また、解析ソフトウェアMarc (MSC)のアップデートに対応するための保守費用と、画像解析ソフトウェアOsiriX MDの費用を計上する予定である。解析に必要なソフトをアップデートすることはソフト機能の向上や不具合の修正を行うために必要である。また、工学的解析手法および結果解釈等の打合せに岡山工業技術センターまでの往復交通費を計上している。高度な専門知識を要する立体膝モデルデータを組み上げる作業においては、岡山工業技術センターからの助言および、必要に応じて解析ソフトの専門家からの助言を得る。また、ここまでの研究成果を公表および発表するため旅費を計上している。
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