研究課題/領域番号 |
20K11411
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮本 直人 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60400462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クロスカントリースキー / 動作分析 / 走法判別 / GNSS / RTK |
研究実績の概要 |
本研究は,クロスカントリースキー選手の競技力向上を目的として,選手がコースのどこで,どのような時に,どの走法で滑走したかを携帯型高精度GNSSを用いて分析・可視化し,選手・コーチにフィードバックするシステムを構築する. 2020年度は,まず最初に携帯型高精度GNSSを用いたクロスカントリースキー選手の競技中の運動データの収集を行うための装置開発を行った.GNSSの移動局にはu-blox社のZED-F9PモジュールとANN-MB-00アンテナを用いた.移動局の装置サイズは約5cm×5cm×1cm,重さは約40gで,USBコネクタに5Vバッテリー,SMAコネクタにアンテナを接続する.ZED-F9Pに内蔵される2周波対応RTK演算器を用いて,スキー滑走中リアルタイムで高精度測位を行った.サンプリング周波数10Hzで,測位衛星システムはGPS・BeiDou・Galileo・QZSSを利用した.NMEA形式のGGA・RMC測位情報をbluetooth無線通信を介して小型スマートフォンでデータロギングした.一方,GNSSの基準局にはTrimble社のBD982とBEITAN社のBT-200-D-TNCを用いた.基準局は実験場に近い空の開けた場所に設置し,補正データはRTCM3.2形式で,NTRIPサーバRTK2GOを通してインターネット経由で移動局に配信した. 次に,開発した携帯型高精度GNSSを用いてクロスカントリースキー競技のスケーティング種目の滑走実験を行った.選手の後頭部・右肩・左肩にアンテナを装着し,ミリメートル精度でスキー滑走中の運動データを計測した.収集した運動データから走法判別アルゴリズムを開発するのに必要な情報となる,サイクルタイム,サイクルレングス,上下左右運動の振幅,直滑降時のスキーと雪面間の摩擦係数等の特徴量を抽出することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,携帯型高精度GNSSの基準局および移動局を開発し,この装置を用いて実際にクロスカントリースキー選手の競技中の運動データの収集を行い,走法判別に必要な特徴量を抽出できるかどうか確認することを目標に研究開発を行い,これを達成することができた. 移動局の装置の小型化・軽量化および開発効率向上が課題だったが,小型スマートフォンを活用することで解決した.小型スマートフォンは,高精度測位データをbluetooth経由で収集・ロギングしたり,基準局の補正データをインターネット経由で取得したり,専用アプリにより実験中の測位データを地図上にリアルタイムで可視化するといったユーザーインターフェースの役割をはたし,移動局の装置の小型化・軽量化に寄与するとともに装置開発・運用効率を非常に高めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,当初の計画通り,携帯型高精度GNSSを用いたクロスカントリースキー選手の競技中の運動データの収集を引き続き行い,走法判別アルゴリズムの開発を行う.さらに,走法判別結果を選手・コーチにフィードバックするための走法分析用可視化ソフトの開発に着手する.競技中の軌跡・スキー速度・コース傾斜・滑走距離・競技タイム・サイクルタイム・サイクルレングス等の滑走情報やコース情報に対して競技者が選択した走法の対応関係を,Google Earthの3次元地図等を利用して,選手・コーチが理解しやすい形式で可視化する. 新型コロナウィルスによる出張制限により実験回数や被験者数の減少が懸念されるが,マスク着用の徹底,三密対策を行うなどの感染症対策を徹底するとともに,事前準備をしっかりするなど実験効率の向上を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスにより,実験回数が当初の予定より減少したため次年度使用額が生じた.実験は次年度に延期する.そのための旅費や物品費として使用する計画である.
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