令和4年度は本学主催の投球障害予防教室を6回開催し、約200名の少年野球選手に対して超音波エラストグラフィを用いた前腕屈筋・回内筋群の硬さ、肘関節内側の動揺性、上下肢の関節可動域、投球時の肘関節外反トルクを計測した。また前年度までに収集したデータの統計解析を進め、前腕屈筋・回内筋群の硬さが成長期野球肘内側障害発症の危険因子であるかを検討した。 研究期間全体を通して、対象となった496名の少年野球選手のうち、除外基準に該当するものや脱落者を除き、1年間追跡可能であった314名を解析対象とした。その結果、1年間で新たに野球肘内側障害を発症した選手は、76名(24.2%)であった。野球肘発症群と非発症群でベースライン時の年齢や身長・体重、練習量、前腕屈筋・回内筋群の硬さ、上下肢の関節可動域などを比較した結果、野球肘発症群で1日の投球数、円回内筋ならびに尺側手根屈筋の硬さが有意に高値であり、また肩関節内旋可動域が有意に低値であった。野球肘内側障害発症の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した結果、最終的に野球肘な内側障害の危険因子として1日の投球数の増大、尺側手根屈筋の硬さ増大が抽出された。さらに尺側手根屈筋んのカットオフ値を算出し、その予測精度も検討した。 以上の成果については、第9回日本スポーツ理学療法学会学術大会で発表した。また論文としてまとめ、現在は英文雑誌へ投稿中である。
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