研究実績の概要 |
アーティスティックスイミング選手と水球選手を対象に,巻き足中の複層リズム課題における肢協調能力を調査した。目的は,巻き足という複雑ではあるが一般的な運動課題の下で,アーティスティックスイマーと水球選手の複層リズムの生成能力を比較することであった.水球選手やアーティスティックスイマーは水中で浮上力を発揮する巻き足運動に慣れているが,巻き足とは異なる頻度で水上の上肢の動きを行う必要がある.アーティスティックスイマー9名と水球選手9名を対象に,自然な巻き足頻度を維持したまま, 腕の円運動の頻度を変化させる課題(自然な巻き足頻度の80 %、100 %、120 %)を行わせた.腕と脚の引き込み現象を評価するために, 腕と脚の平均頻度を2元配置分散分析 (ANOVA) を用いて分析した. その結果,アーティスティックスイマーと水球選手は自然な巻き足頻度の変動係数が類似していたが, 水球選手は120 % の頻度で腕の円運動を行いながら巻き足を自然な頻度で行うことができなかった. 一方,アーティスティックスイマーはすべてのリズムで引き込み現象がみられず,自身の自然な巻き足頻度を維持することに成功した. このことより,アーティスティックスイマーは水球選手よりも複層リズムにおける肢間協調能力が優れていることが明らかとなり,音楽を使ったアーティスティックスイミングのトレーニング経験が肢間協調能力を高めることにつながったと考えられた. 本研究結果よりつぎのように結論づけられた.アーティスティックスイマーは日常のトレーニングにおいて音楽と合わせる動作を行っていることから,水球選手との間に複層リズム生成能力の違いが引き起こされた可能性がある.したがって,音楽を用いた四肢のコーディネーションの訓練により, 複層リズム課題の下での肢間協調能力を獲得することができると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学術雑誌に論文投稿をし,原著論文として2編が掲載された。 (1) Differences in limb coordination in polyrhythmic production among water polo players, artistic swimmers and drummers. Journal of Motor Behavior, 53, 191~199, DOI: 10.1080/00222895.2020.1748860, 2020-4. (2) The effect of experience in movement coordination with music on polyrhythmic production: Comparison between artistic swimmers and water polo players during eggbeater kick performance. PLOS ONE, 15, e0238197, DOI: 10.1371/journal.pone.0238197, 2020-8.
|