アーティスティックスイミングは音楽に合わせてパフォーマンスを行うスポーツである. 動きは音楽が追加されるとはるかに複雑になる.水上で行う腕や脚の動きは音楽に合わせて動かす.一方で,水中ではその水上の動作を可能にするために必要な推進力(浮上力)を発揮する動きが必要である.したがって,アーティスティックスイマーの水上と水中の動きは目的が異なるため一致していない,もしくは同じリズムで動いていない可能性がある. 手足を独立して動作させることは,アーティスティックスイマーにとって不可欠なスキルである.しかし,先行研究で,人間の四肢間運動には自由度は1つしかなく,そのため四肢における動作がいずれかの四肢の動作へ引き込まれる,もしくはロックされる傾向があることが示唆されている.言い換えれば,手足を繰り返し動かしていると,動作開始時に手足それぞれの動作における頻度が異なっていても,最終的には同じ動きの頻度へと変化する. アーティスティックスイミングにおけるパフォーマンスは,複層リズムの生成能力に大きく依存していると考えられるが,ほとんど研究がなされていない.そこで,アーティスティックスイマーの複層リズム生成能力について,ドラマーや水球選手と比較し,複層リズム課題下におけるアーティスティックスイマーの肢間協調能力の特徴を明らかにすることを目的とした. 研究1では,アーティスティックスイマー,ドラマーおよび水球選手を対象に,指と足での複層リズムのタッピング課題における肢間協調能力を比較した.研究2では,アーティスティックスイミング選手と水球選手を対象に,巻き足中の複層リズム課題における肢協調能力を調査した.その結果,水中環境下で音楽に合わせて動作を行うアーティスティックスイミング特有のトレーニングが,複層リズム課題における肢間協調能力を高めることが示唆された.
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