研究実績の概要 |
今年度は,冷却を伴う筋収縮が骨格筋のミトコンドリア生合成の因子に与える影響の解明を目的に研究をおこなった.Wistar系雄性ラットを常温群と冷却群にわけ,常温群は水, 冷却群は氷水の入った袋を用いて,下腿前部を3分間冷却した. その後, 前脛骨筋を20 Hzにて1秒間電気刺激, 1秒間休息を30回繰り返すプロトコルを1セットとし, これを10セット実施した. 筋温について, 収縮プログラム中,常温群では約30℃, 冷却群は約20℃を推移した.筋発揮張力を分析し,最大発揮張力と力積を算出した.その結果,2群間に各セットごとの最大発揮張力に違いはなかったが,冷却群の力積は,常温群の力積よりも有意に高値を示した (p < 0.05). 力積が大きかったことから,冷却が仕事量を増加させたと言える.さらに,電気刺激プロトコル3時間後の前脛骨筋を摘出し, Real time RT-PCR法を用いて,peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1 (PGC-1)αのmRNA発現量を測定した. その結果,PGC-1αのmRNA発現量は, 電気刺激による主効果はみられたものの, 冷却群の電気刺激群は, 常温群の電気刺激群より有意に低値を示した. 以上の結果から,冷却は筋収縮の仕事量を増加させるにも関わらず,ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーターであるPGC-1αのmRNA量の増加を減弱させることが明らかとなった.よって,冷却が持久的運動の効果 (ミトコンドリア生合成)を減弱させる可能性が示唆された.
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