研究課題/領域番号 |
20K11418
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
村田 真一 静岡大学, 地域創造学環, 准教授 (20435093)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 総合型地域スポーツクラブ / 文化 / 住民文化 / クラブ文化 / 価値意識 / 社会的成果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域スポーツクラブが支持される基盤として、その当該地域にはいかなる文化が存在しているのかについて明らかにすることである。その目的の下位課題として令和2年度は、総合型クラブを構想した地域と、敢えて構想しなかった地域の差異を検証するための尺度構成となる、文化概念の整理に着手した。 本作業で抽出された文化概念は、当該クラブの内と外とで支配する2つの文化要因に分かれた。まず、クラブ境界の外を支配する「住民文化」が構想された。この文化は、例えば、スポーツクラブといった明確な社会構成物に対する体系化された意識形態(イデオロギー)ではなく、自覚的に体系化される以前の、個人による日常的な心理の層を指す。具体的には、「会員または周辺住民らが日常的に抱いている価値意識」と定義できる。このような着想に至ったのは、個人の志向や行為を突き動かす背景には、その基盤となる文化要因が存在しているという先行研究に拠るものであった(ホフステード1984;2013)。次に、クラブ境界の内を支配する「クラブ文化」が構想された。さらにこれは、後述する幾つかの文化要因がサブシステムとなる。まず考え方として、クラブの営みを支配する対象(機能)には事業経営とスポーツ活動の二重構造が認められる。そこで、前者に関わる文化要因として「経営文化」と「組織文化」を、後者に関わる文化要因として「活動文化」と「集団文化」を構想した。そしてさらに、「クラブ生活文化」を構想した。これは、事業経営かスポーツ活動かのいずれにせよ、当該クラブに関わる者たちのその範疇での生活様式を問うものとした。このように、上述した6点の文化要因を構想した上で、現在はそれぞれの概念定義と尺度構成の構築に取り組んでいる。 また、総合型クラブの社会的成果についても、「持続可能な発展」概念を参照しながら概念整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概念の論証はそれなりに進んだものの、新型コロナウイルスの影響により、実証的調査(フィールドワークや現地調査)は難航を極めた
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今後の研究の推進方策 |
概念の整理を進めつつ、今後は本格的な実証データの確保がのぞまれる。 まずは、「総合型クラブを構想した地域と、敢えて構想しなかった地域の差異の検証」について、フィールドワーク法を採用し、定性的に記述することとする。但し、実地調査を頻繁にできない今次の状況から、当該地自治体(行政区)への質問紙調査をも想定・準備中である。選定後は、関係者の証言や各種資料等を駆使し、モノグラフ的にまとめる。 次に、「構想された中でも、比較的、運営が安定しているクラブと不安定なクラブを事例選定・検証」する。事例選定の際はデルファイ法を用いて、関係者の証言等から事例を選定する。事例選定がなされた後は、各クラブと地域の関係性について、フィールドワーク(質的研究)と質問紙調査(量的研究)での混合研究法にて明らかにしていく。フィールドワークの際は、当該地域のスポーツ振興の全容を歴史社会学的に紐解く。これを通じながら、量的研究では既に構想として示した、6つの文化要因の仮説的構成概念を検証する。量的研究における分析方法は、2群間(あるいは複数クラブ間)の差を検証することとなる。また、因子分析、さらに因子得点を用いてのクラスター分析やそれによって分類されたカテゴリー別の比較をするなどして文化的価値次元を定め、次元間の関連性について検証する。さらには、総合型クラブに影響与える文化要因のメカニズムとして、「住民文化」と「クラブ文化」の関連性を検証することとなる。 以上、これらの分析方法は、文献考証等の理論開発段階、実証研究(主として量的調査)、そしてインタビューやフィールドワークによる実践応用段階、というステップを踏むことで、概念の識別、分析、洗練化を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、実地調査を殆どキャンセルしたことでの「旅費」の未使用と、それに伴う「物品費」の残高があるため。次年度は、実地調査の実施と併せて、質問紙調査への変更をも予定するため、それに係る郵券代等の支出も見込んでいる。
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