研究課題/領域番号 |
20K11420
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
瀬戸 邦弘 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (40434344)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 応援団 / 理外の理 / 日本文化論 / 身体論 / バンカラ文化 / 体育会文化 / 利他主義 |
研究実績の概要 |
2022年度は新型コロナウィルスに対する社会全体の対応の緩和がみられたため、3年ぶりに多くの参与観察を実施する事が叶い、本課題の重要な知見を得られる年であった。たとえば、甲府工業高校や浜松商業高校など、バンカラ応援団文化を色濃く継承する高校での平素の練習や、早稲田大学応援団の「稲穂祭」「野球早慶戦」など応援団文化の実践の場にて研究・調査を実施できた。これらを通して、彼らがどのように日本近代という空間で、近代的な身体観を構築・継承し、また、それを表象してきたのかを考察するための有益な情報を蓄積する事が出来た。また、研究成果の社会還元のために、今年度は二つの学会大会において研究発表を行っている。たとえば、5月に台湾で行われた国際学会2022International E-Conference of Sport, Leisure and Hospitality Managementへオンライン参加し「無形文化財としての応援団文化とその継承COVID-19の流行とデジタルアーカイヴ」(オンラインポスター発表)を行っている。また、対面では「来訪神としての応援団 伝統校と言う歴史空間と応援団」(日本スポーツ人類学会第24回大会 於:文部科学省研究交流センター)を口頭発表し、対面空間においてスポーツ文化研究者と多くのコミュニケーションの機会をも得る事ができて、価値ある時間となった。また、執筆活動としては、たとえば、著書として「理外の理としての応援団」『スポーツ評論第47号』(創文企画)や、原著論文として「応援文化論 文化装置としての応援団」(スポーツ社会学研究31号)を執筆し、すでに掲載・出版されている。そして、日本経済新聞社、読売新聞社からの取材を受けて、応援団の歴史と文化に関するインタヴュー記事がそれぞれ2023年1月の全国紙に掲載された事によって、研究課題の社会還元も実践された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年から続く新型コロナウィルスの世界的な感染拡大やその影響により、日本国内においても、人の物理的な動きが大幅に制限され、学校空間でも多くの行事が中止、自粛されるに至った事は言うまでもない。そのために、応援団活動やその文化の動態を対象とする本研究の遂行も大変厳しい状況にあったと言わざるを得ない。そもそも、本研究は全国に数多点在する応援団の参与観察による質的研究であり、その研究手法は現地調査によって担保されるものである。先述したように、数年に渡り、新型コロナウィルスの感染拡大が続いたこの数年は、日本中の応援団でほぼ活動が中止していたため、本研究はその進捗に大きな制限を受けたと言わざるを得ない。一方で、その時間は、これまでの調査成果の整理や分析、それらを学会において発表する事によって、調査の振り返りと新たな課題の発見がなされた時間とも言え、その点は評価できる。これらの蓄積は、今後の研究活動に更なる深化を齎すと考えられる。また、2022年はこれまでの状況から「好転」の兆しが見えた年であった。研究実績でも触れたが、参与観察による研究が再開できた年であり、静岡や山梨、東京などで多くの研究調査が行われ、多くの知見を得る事が出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
我が国においてもコロナ禍における混乱状態にも終焉、収束の光が見えてきたように感じている。2023年度は、2020、2021、2022年度に参与観察を予定していた学校および応援団とも新たに、そして綿密に連絡を取りながら、更に連携を深め、現地における研究調査が実施できるように準備を整えていく。現在の予定では5月に岩手県盛岡市の盛岡第一高等学校応援団、上智大学応援団、7月に小樽商科大学応援団、北海道大学応援団などを訪問すべく準備に余念がない。また、今年度は、研究成果の途中経過を社会還元するために、たとえば、5月には昨年度に引き続き、台湾・台北で実施される国際学会2023International E-Conference of Sport, Leisure and Hospitality Managementでの研究発表(口頭)も予定されており、国際的な枠組みの中での研究成果発信、海外からの視点における日本文化としての応援団に関する知見の収集準備にも余念はない。6月には首都圏の大学応援団の新入団員を対象に行われる催しにおいて「無形文化財としての大学応援団」と題した講演を行う予定であり、応援団文化が近代日本社会で、如何に構築され無形文化(財)としての価値を得て、これまで継承されてきたのか、そのプロセスに関して詳らかにする予定である。また、8月には高松市にて、香川県高等学校文化連盟の招聘で高校生向けの応援団文化に関する講演・ワークショップも行う予定である。そして、年度末には日本スポーツ人類学会の学会大会にて応援団文化に関するシンポジウムも計画しており最終年度を迎える本課題は最終段階に入る。あわせて、シンポジウムの成果などを、学術雑誌に寄稿する予定であり、口頭発表、シンポジウム、論文執筆とさまざまな発表機会を利用して研究成果を社会に還元する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は未だコロナ禍において、全国の応援団の活動が大幅に自粛され、また県を跨いだ移動や学校を訪問しての参与観察の実施が困難であった。そのため、予算の繰り越しが発生している。今年度は、かなり社会状況が改善される兆しが見え始めたので、これまでにできなかった研究調査(参与観察)を、訪問先と相談し、改めて計画・実施する予定である。
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