研究課題/領域番号 |
20K11420
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
瀬戸 邦弘 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (40434344)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 応援団 / 理外の理 / 利他主義 / 日本人論 / 日本文化 / 近代日本 / バンカラ文化 / 体育会文化 |
研究実績の概要 |
2023年度は5月から新型コロナウィルスが5類に移行し、本ウィルスに対する社会の対応の緩和がみられたため、多くの参与観察を実施でき、昨年度よりも本課題が進み重要な知見を得られる年であった。たとえば、参与観察では学習院大学や上智大学などバンカラ応援団文化を色濃く継承する大学で応援団文化の調査を実施できた。特に両大学においては「夏合宿」に同行することが叶い、数日間24時間寝食を共にして醸成される応援団の「意識や文化」について具に観察することができ、どのように「応援団的な意識や身体観」を構築・継承してきたのか有益な情報を得る事が出来た。 あわせて、研究成果の発信のために、今年度は二つの学術会議にて研究発表を行った。5月に台湾・台北で行われた国際学会「2023 International Conference of Sport, Leisure and Hospitality Management」へ参加し「メディア作品に醸成される応援団文化」(対面口頭発表)を行っている。この発表では台湾側研究者から多くの質問を受け、海外の研究者と意見交換を行う事ができた。また、2023年度末には、鳥取大学で日本スポーツ人類学会第25回記念大会を開催し、記念シンポジウム「応援団のミライ 応援団という近代日本文化を考える 」を企画・運営し、シンポジウムのファシリテーターとして、また口頭発表者・シンポジストとして参加した。本企画はオンライン開催も行い、全国の研究者・関係者とコミュニケーションの機会としても機能し多くの知見を得る事ができた。 そして、研究成果の社会への還元のためにマスコミを通した成果の発信も継続して行っている。今年度、特筆すべきは海外の有力メディアであるAFP通信社から取材を受け、そのインタヴュー記事がWebニュース「euro news」他に掲載され本課題の社会還元が世界規模で行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年から続いた新型コロナウィルスの世界的感染拡大やその影響により、日本国内においてもさまざまな動きが大幅に制限され、2020~2022年に関しては、学校空間でも多くの行事が中止、自粛されるに至った事は言うまでもない。そのために、応援団活動やその文化の動態を対象とする本研究の遂行も大変厳しい状況にあったと言わざるを得ない。一方で、この時間は、これまでの研究成果の整理や分析、それらを学会において発表する事によって、研究・調査の振り返りと新たな課題の発見がなされた時間とも言え、その点では貴重な時間となり、評価できるともいえる。これらの蓄積は、今後の研究活動に更なる深化を齎すと考えられる。 その後、2022年度からはコロナ禍の終息傾向に伴い、それまでの閉塞状況から「好転」の兆しが見える事にあり、23年度は5類への移行から更に好況を迎えたと感じ・考えている。「研究実績の概要」でも触れたが、2023年度は、参与観察による研究がこれまでの遅れを「取り戻すような」進捗を得た年であり、充実した研究調査が行われ、多くの重要な知見を得る事が出来たと考えており「おおむね順調に進んでいる」のステイタスと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、多くの「密」を包含する応援団空間においても、コロナ禍における混乱状態に終焉、収束の光が見えてきた。2024年度は2020~2022年度に参与観察を予定していた学校および応援団を含めて、改めて綿密に連絡を取りながら、参与観察調査・研究が実施できるように準備を整えている。 現在の予定では、5月に宮城県仙台市の宮城県仙台第一高等学校応援団(一高・二高硬式野球定期戦)、岩手県盛岡市の盛岡第一高等学校応援団(盛岡一高創立記念大運動会)、上智大学応援団(入団式)、6月には全国応援団フェスタ(多大学のリーダー公開)、7月には、北海道の小樽商科大学応援団、および北海道大学応援団(北大・商大対面式)などを訪問すべく準備に余念がない。 また、今年度は、研究成果の途中経過を社会還元するために、たとえば、6月の応援団フェスタ時には「無形文化財としての大学応援団」と題した講演を行う予定であり、応援団文化が近代日本社会で如何に構築され、ひとつの無形文化(財)としての価値を得ながら継承されてきたのか、そのプロセスに関して詳らかにする予定である。あわせて、10月に盛岡市にて盛岡一高同窓会(白堊会)の創立100周年記念行事に講演者として招かれており、東北のバンカラ応援団文化に関して講演を行う予定である。そして、8月の日本体育・スポーツ・健康学会や、年度末には日本スポーツ人類学会の学会大会にて、本研究課題に関する発表も計画している。 また論考の執筆・発表に関しては、2023年度に開催された日本スポーツ人類学会におけるシンポジウム「応援のミライ」の成果(口頭発表や議論)を、学術雑誌『スポーツ人類学研究』に「特集」原稿として掲載を要請されており、論考を発表する予定である。この他にも口頭発表、シンポジウム、論文執筆とさまざまな発表機会を利用して、研究成果を学術世界に、社会一般に還元する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度までのコロナ禍において、全国の応援団の活動が大幅に自粛され、また県を跨いだ移動が難しかった事など、学校を訪問して実施される本課題の生命線である「参与観察」の実施が困難であった。そのため、「必然的」に予算の繰り越しが発生している。昨年度に続き今年度は、かなり社会状況が改善される兆しが見え始めたので、これまでにできなかった研究調査(参与観察等)を、訪問先と相談し、改めて積極的に計画・実施する予定である。
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