研究課題/領域番号 |
20K11422
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
山元 健太 帝京平成大学, 薬学部, 准教授 (80434380)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動 / 身体活動 / 糖尿病 / SGLT2阻害薬 / 血糖管理 |
研究実績の概要 |
人間ドックデータベースによると、薬物療法を受けているⅡ型糖尿病患者の約50%しか、合併症予防のための血糖コントロール目標(HbA1c7%未満)を達成していない。運動は糖尿病の予防のみならず、その改善にも有効とされているが、運動と薬物療法の併用効果についての研究は非常に少ない。新しい糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、運動の効果には無い、尿中に糖を排泄させることで血糖を下げる薬である。本研究では、このSGLT2阻害薬と運動・身体活動の併用が血糖コントロール目標達成率に及ぼす影響を明らかにする。 2020年度は、糖尿病治療薬を服用している患者において、血糖コントロール目標達成率に対する運動や身体活動とSGLT2阻害薬の併用効果(相互作用)を横断的に解析するとともに、血糖コントロール目標達成率と関連する他の要因の洗い出しを行った。解析対象は31,827名の糖尿病治療薬服用患者とした。そのうち、SGLT2阻害薬を服用していた患者は6,668名であった。SGLT2阻害薬を服用していた患者で血糖コントロール目標(HbA1c7%未満)を達成していた患者は51%であった。SGLT2服用患者において、運動習慣がある患者(目標達成率54%)や身体活動のある患者(目標達成率54%)では有意な達成率の増加が観察された。しかし、血圧や血中脂質などの他の要因を考慮すると、その有意差は無くなった。また、血糖コントロール目標達成に有意に関連した要因は、その関連の強い順から、糖尿病治療薬の薬剤併用数、ALT、AST、LDLコレステロール、γ-GTP、中性脂肪、収縮期血圧、高血圧治療薬の服用、性別、BMI、HDLコレステロール、年齢、服薬アドヒアランス、飲酒習慣であった。今後はこれらの結果を考慮して、血糖コントロール目標達成に対する運動や身体活動とSGLT2阻害薬の併用効果(相互作用)を縦断的に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は約480万人の健診データとレセプトデータを取得した。また、取得したデータから解析用データセットを構築し、血糖コントロール目標達成率に対する運動や身体活動とSGLT2阻害薬の併用効果(相互作用)を横断的に解析した。さらに、血糖コントロール目標達成率に影響を及ぼす他の要因の洗い出しを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度の解析結果を考慮して、血糖コントロール目標達成に対する運動や身体活動とSGLT2阻害薬の併用効果(相互作用)を縦断的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
独立基盤形成支援(試行)の追加配分において、高性能コンピューターを2台計上した。この独立基盤形成支援(試行)追加配分の使用目的は、申請者が効率的に研究実施計画を遂行できる環境を構築するとともに、この研究実施計画を足掛かりに新しいプロジェクト研究を立ち上げる基盤を整備することである。今年度は膨大なデータを効率よく解析するために高性能コンピューター1台分の予算を執行した。次年度以降、本申請課題の遂行中に得られるデータを利用し統計学と数理解析を駆使して、各個人の血糖(HbA1c)管理目標達成の確率を最も高める方法を提供するモデルの開発を目指す。この数理解析用の高性能コンピューター1台を次年度に計上する。
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