研究課題/領域番号 |
20K11426
|
研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
我妻 玲 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00347121)
|
研究分担者 |
荒川 正行 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (90398868)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アセチルコリン受容体 / クラスター形成 / カルシウム / キレート剤 / 筋管細胞 |
研究実績の概要 |
活性型ビタミンDが、シナプス後膜の分化に与える影響について検討した。運動神経終末から分泌されるAgrinがLrp4に結合することでMuSKの活性化が起こり、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のクラスターが筋細胞膜上に形成される。本研究では、マイクロプレートに筋管細胞を形成させた後、Agrinを添加してnAChRのクラスター形成を誘導するin vitro実験系を構築した。この実験系は、AChRのクラスター活性を簡便・迅速・高感度に測定することができる。 先行研究により、Agrin誘導性のnAChRのクラスター形成と筋管細胞内のカルシウム動態には密接な関係があると報じられている。活性型ビタミンDは、細胞内のカルシウム濃度を上昇させることが知られている。そこで、活性型ビタミンDによる細胞内カルシウム動態の変化がAgrin誘導性のnAChRクラスター形成に与える影響について検討した。なお、以下の結果は、Agrin処理のみのnAChRのクラスター形成活性を100%としたときの結果である。 1. 活性型ビタミンDとAgrinを同時に処理した場合、nAChRのクラスター形成活性は、およそ100%増加した。 2. 細胞内カルシウムキレート剤であるBAPTA-AMは、Agrin処理のみのnAChRのクラスター形成活性をおよそ70%減少させた。 3. BAPTA-AMは、活性型ビタミンDとAgrinを同時処理した時のnAChRのクラスター形成の活性を90%減少させたが、Agrin処理のみのnAChRのクラスター形成活性レベルを維持していた。 これらの結果から、活性型ビタミンDによる細胞内カルシウム濃度の上昇はAgrin誘導性のnAChRのクラスター形成活性をさらに増加させる可能性がある。しかしながら、カルシウムによって惹起されるシグナル伝達経路だけでなく、他のシグナル経路による調節も存在すると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Agrinの添加によるnAChRのクラスター形成誘導モデルを構築することができ、活性型ビタミンDの効果について検討することができた。ほぼ当初の計画の通り課題を遂行している。
|
今後の研究の推進方策 |
活性型ビタミンDによるAgrin誘導性のnAChRのクラスター形成促進機序について検討する。具体的には、シナプス後膜に発現していると考えられる分子にターゲットを絞り、それらの発現と活性型ビタミンDの関係について明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用する消耗品が通常の価格よりも安いキャンペーン価格で購入することができたため、未使用額が生じた。未使用額は、次年度の消耗品の購入に充てることとしたい。
|