研究課題/領域番号 |
20K11426
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
我妻 玲 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (00347121)
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研究分担者 |
荒川 正行 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (90398868)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビタミンD / サルコペニア / 神経筋接合部 / ニコチン性アセチルコリン受容体 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
世界最先端の超高齢社会に突入した我が国において、高齢者のQOLの低下を防ぐことは社会的要請の強い重要な課題である。高齢者のQOLの低下は、運動機能の低下による影響が大きい。これは、加齢に伴う骨格筋量の減少、いわゆるサルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)が原因と考えられる。これまでの国内外の研究により、サルコペニアに関連する基礎的、臨床的そして疫学的な知見が集積されているが、その発症・進行メカニズムの詳細は不明である。本研究の目的は、サルコペニアの発症・進行にビタミンDが関与する可能性に注目し、神経筋接合部におけるビタミンDの生理的役割について明らかにすることである。 昨年度は、マウス骨格筋由来筋芽細胞株を用いたin vitro解析系を用いて、ビタミンDが筋管細胞上にアグリン誘導性のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のクラスター化を促進すること、この作用は細胞内カルシウムキレート剤であるBAPTA-AMにより抑制されることを明らかにした。今年度は、ビタミンDによるnAChRクラスター化機構の理解を目指し、コントロール群(C群)、アグリン処理群(A群)、ビタミンD処理群(D群)、アグリンとビタミンD処理群(AD群)の4群に分け、網羅的に遺伝子発現パターンの解析を行った。トランスクリプトーム解析並びに階層的クラスタリング解析により、C群と比較して、D群およびAD群は、遺伝子発現プロファイルを大きく変化させることが明らかとなった。さらに、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)解析により、A群では、mRNAのプロセッシングやスプライシング関連遺伝子セット、筋収縮関連遺伝子セット、D群とAD群では、Rho GTPaseシグナリング関連遺伝子セットや細胞外マトリックス関連遺伝子セット、アクチン細胞骨格の制御関連遺伝子セットに変化が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたビタミンDによる遺伝子発現の変化に関する知見を得ることができた。一部、新型コロナ感染症の影響で予定していたタンパク質の発現解析ができなかった部分もあるが、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
トランスクリプトーム解析で得られた結果を更にリアルタイムPCR・ウェスタンブロット解析で確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、予定していたタンパク質の発現解析が一部行えず物品費において使用額が減少したため。
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