研究課題/領域番号 |
20K11429
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
三上 俊夫 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60199966)
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研究分担者 |
金 芝美 日本医科大学, 大学院医学研究科, ポストドクター (00868177)
朴 ジョンヒョク 日本医科大学, 大学院医学研究科, ポストドクター (80835843)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動 / NAD / eNAMPT |
研究実績の概要 |
本研究では,「持久的運動はアドレナリン分泌に依存して脂肪組織のeNAMPT放出,海馬のNAMPTとNAD+を高めて認知機能の改善に貢献する」という仮説を検証することを目的として研究を行っている.その研究の1年目では,一過性の運動により脂肪組織からEV中に含まれて血中に放出されるeNAMPT量が増加するか否かについて運動強度との関係で調べた.実験動物は10週齢の雄C57BL/6Jマウスを用い,トレッドミル走に慣らした後に無作為に以下の(1) 低強度運動群,(2) 中強度運動群,(3) 高強度運動群の3群に分けた.各群のマウスには,低強度運動群にはトレッドミル速度15 m/分での60分のトレッドミル走,中強度運動群にはトレッドミル速度20 m/分での60分のトレッドミル走,高強度運動群にはトレッドミル速度20 m/分から3分毎にトレッドミル速度を増加させて疲労困憊まで走らせた.全群とも運動前,運動直後,運動の1,4時間後に吸入麻酔下で尾静脈より採血し,遠心分離して血漿を回収した.この血漿を用いて抗NAMPT抗体を用いたウェスタンブロット法で血漿中のNAMPT定量した.同時に血漿トランスフェリン濃度を測定して,血漿中のNAMPT量をトランスフェリン量で補正した数値として求めた.その結果から,中強度運動の2時間後にけっしょうeNAMPT濃度は増加し,低強度と高強度運動では同様な増加は認められなかった.同時に測定した,血漿グリセロール濃度の変化より,中強度後にのみ血漿グリセロール濃度の増加が認められたことより,運動による脂肪分解の増加に伴い脂肪組織からのeNAMPTの放出が増加する可能性が示唆された.次年度以降は,運動による脂肪分解の増加と脂肪組織からのeNAMPT放出の関係を更に検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
運動により血漿eNAMPTの増加が起こり,その増加は脂質代謝の高まる中強度の持久的運動による起こることが明らかにできた点では,当初の研究目標の一部は達成できた.しかし当初の実験予定では,一過性の運動後の血漿eNAMPTが増加する場合は,その増加が運動により副腎皮質からの分泌が増加するアドレナリンと関係するか否かについても検討することを計画していた.しかし,血漿eNAMTの測定法を確立するのに予想外の時間がかかってしまったため,1年目ではこの点についての検討は行えなかった.また,運動により血漿eNAMPT濃度が増加することは確認できたが,このeNAMPTが脂肪細胞から細胞外小胞(EV)に含まれて放出されているのか否かという点についても確認できていなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は,1年目で行えなかった運動による血漿eNAMPTの増加に血漿アドレナリンの変化が関与するか否かについて,アドレナリン受容体阻害剤を投与した運動負荷実験を行って検討し,また運動により増加する血漿eNAMPTが脂肪細胞から細胞外小胞に含まれる形で放出されているのか否かについても明らかにする予定である.加えて,2年目の研究目的である初代培養脂肪細胞に対してアドレナリン,アドレナリン受容体阻害剤(プロプラノロール),または運動後のマウスより採取した血漿を投与し,その際の培地中に放出されるeNAMPTの放出を調べ,運動による脂肪細胞からのeNAMPT放出とアドレナリンの関係について検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究費は概ね研究実行に使用しており,残った僅かの研究費は次年度の実験遂行に利用する予定である.
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