本研究は、情動または認知的負荷により誘発される認知的および運動エラーの発生メカニズムを明らかにすることを目的とした研究である。1、2年目は計測環境の整備や実験課題の作成を行った。3、4年目では、作成したNavon刺激による注意の切り替え課題を用い、認知的負荷時における認知的および運動エラーの発生を継続的に検討した。 4年目には3年目までのデータを用いて、日本スポーツ心理学会においてポスター発表を行った。さらに、データを継続して追加し、高齢者45名、若年者14名とした。前年度と同様に、注意の切り替え課題の反応時間、課題遂行中の重心動揺軌跡を計測した。しかしながら、視線については眼瞼下垂の高齢者も多く、適切な測定条件が維持できなかったため、測定および分析からは除外した。 結果は次の通りである。高齢者では、日常的に運動習慣のある高運動群よりも習慣のない低運動群の方が刺激判断時間が遅延し、見落とし率が著しく高かった。また、平常時の直立姿勢においても、低運動群の移動距離が長く、認知課題遂行時においてもその傾向が維持されていた。現在は若年者のデータを分析中であるが、若年者は運動習慣の有無に関係なく高運動群と類似の傾向を示している。これらのことから、運動習慣の有無は注意の切り替え機能と密接に関連すること、そして通常の直立姿勢でも重心動揺に影響することが示唆された。行動指標および重心動揺振幅の分析が終了次第、日本体力医学会もしくは日本スポーツ心理学会での学会発表および学術雑誌への論文投稿を行う予定である。
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