研究課題/領域番号 |
20K11436
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
鈴木 康弘 東京経済大学, 全学共通教育センター, 教授 (00392697)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スプリントトレーニング / 長距離選手 / 最大酸素摂取量 / ランニングエコノミー |
研究実績の概要 |
男子大学生陸上競技長距離選手14名を対象に、所属チームの練習を行うコントロール群6名(年齢:20 ± 1歳、身長:169.5 ± 5.2 cm、体重:57.0 ± 5.1 kg)とスプリントトレーニングを行うトレーニング群8名(年齢:20 ± 1歳、身長:171.2 ± 5.7 cm、体重:57.6 ± 4.6 kg)に分けた。対象者は週に2回6週間のスプリントトレーニングを行い、トレーニング前後に漸増負荷テスト (最大下酸素摂取量および最大酸素摂取量)、100 m・400 m走タイムの計測、3,000 mタイムトライアルを実施した。コントロール群は、週2日の高強度トレーニングの内容を中距離から長距離走とした。例えば、20km走、3000m走、2000m走 × 5本、1500m走 × 3本、1000m走 × 5本、400m走 × 12本などであり、これらのいずれかを高強度のトレーニング日に実施した。一方、トレーニング群は、高強度トレーニングの内容をこちらが提供するスプリントトレーニングとした。スプリントトレーニングは、50mと200mの全力疾走の2種目から構成され、1日で両種目を実施した。50m走は、5本を1セットとし、1本ごとに30秒間の休息を設けた。セット間の休息は5分間とした。介入1〜2週目は3セット、3〜4週目は4セット、5〜6週目は5セット実施した。200m走は、5本を1セットとし、1本ごとに約30秒間の休息を設けた。 その結果、長距離選手に対する6週間のスプリントトレーニングは、長距離走パフォーマンスを改善しないが、競技レベルが低い選手ほどスプリントトレーニングの効果が現れる可能性が示された。本研究の被験者の自己記録と照らし合わせて考えると、5,000mの14分台前半を目指す選手には本研究で実施したスプリントトレーニングが有効である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
常酸素環境におけるスプリントトレーニングが長距離走者の運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討できたため、順調に研究データを蓄積することができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
陸上競技の長距離種目のパフォーマンスは、最大酸素摂取量(VO2max)とランニングエコノミーの影響を強く受ける。我々の研究グループは、日本トップレベルの長距離走者を対象に行った実験において、10,000 mのシーズンベストタイムに対して100 mと400 mの全力走タイムが相関関係にあるが、VO2maxとランニングエコノミーとの間には有意な相関関係が見られないことを明らかにした。すなわち、日本トップレベルの長距離走者においては、VO2maxやランニングエコノミーなどの有酸素性能力の維持・向上ばかりではなく、スプリント能力の向上が更なる長距離走パフォーマンス向上に効果的である可能性がある。昨年度は低酸素環境でのスプリントトレーニングを導入することができなかったので、次年度に低酸素環境のスプリントトレーニングを実施し、常酸素環境でのスプリントトレーニングの追加実験をすることができれば、研究完了になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の初年度にコロナ禍のため十分な実験を実施することができなかったため、予算をすべて消化することができなかった。また昨年度も予定されていた実験をコロナ禍のためにすべて実施することができなかったため、予算を繰り越すことになった。
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