研究課題/領域番号 |
20K11439
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂本 昭裕 筑波大学, 体育系, 教授 (10251076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キャンプセラピー / 発達障碍児 / 自己概念 / 社会的スキル / 被受容感 / 共分散構造分析 |
研究実績の概要 |
人の自己形成は、社会的スキルなどの社会性機能を基盤に促進され、その可能性は発達障碍児にも存在するとされている。自然体験療法(キャンプセラピー)では、グループ体験によるカウンセリングが特徴であり、クライエントの自己概念や人間関係などの社会的スキルの育成に有効であると考えられている。しかしながら、発達障碍児の自己形成と社会性機能の関連に焦点を当てた実証的な研究はまだ行われていない。一方で、発達障碍児の自己概念は、定型発達児とは異なると指摘されている。そこで、本年度は、発達障碍児の自己概念、社会的スキル、および被受容感の関連性を、定型発達児と比較することで明らかにする。 調査対象者は、13日間のキャンプセラピーに参加した小学5年生から中学3年生86名であった。内訳は、定型発達児童生徒66名(男子43名、女子23名、平均年齢12.0±6.73歳)と発達障碍児と診断されているか、あるいは発達障碍の傾向を指摘される児童生徒20名(男子16名、女子4名、平均年齢13.43±0.84歳)であった。キャンプセラピー前後の両群の自己概念の得点、社会的スキル得点及び被受容感得点の関係について、共分散構造分析の多母分散同時分析を用いて比較検討した。その結果、発達障碍群の自己肯定意識は、対他者領域の場合は、被受容感から社会的スキルを媒介して高まるが、対自己領域の場合は、被受容感を高めることによって対自己領域の意識が高まることが示唆された。発達障碍群においては、被受容感を得られることが重要であり、そのことが発達障碍群の社会的スキルを高め、自己や他者に対する肯定的な自己意識の向上に寄与することが明らかになった。一方、定型発達群では、社会的スキルの評価が対自己領域、対他者領域の自己意識に影響すると言え、両群の違いが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究の最終年度であり、これまでの自然体験療法プログラムで得られた調査データをまとめ、研究発表および論文執筆を行い、研究を総括する予定だった。しかし、前年度までの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、一部のデータ収集と分析が遅れていた。本年度においては、概ね研究の遅れを取り戻すことができたが、欧文の論文執筆に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
データの分析方法の再検討を行ったことや欧文による論文執筆の遅れにより、研究計画を1年延長した。したがって、2024年度には論文の執筆を推進し、欧文の校閲によって高い水準を確保した後、海外のジャーナルに投稿する予定である。投稿を予定しているジャーナルに採択されないことも考えられるため、複数の投稿先を検討する。2024年度は、研究の最終年度であり、これまで実施してきた研究課題を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金の残金が生じた理由は、今年は欧文論文の校閲ができなかったためである。また、国際学会大会がオンラインで開催されたため、旅費などの支出が不要で、参加費のみの支出であった。2024年度には、論文の校閲費と国際学会への出張旅費として予算を計画している。
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