研究課題/領域番号 |
20K11444
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮田 浩文 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90190793)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 運動ニューロン / 神経栄養因子 |
研究実績の概要 |
本研究では,脊髄の各種mRNAの発現量を比較し,神経系の可塑性を比較的簡単に調べる方法を模索している。ラットの腰髄膨大部には後肢の骨格筋を神経支配するαおよびγ運動ニューロンが多数含まれるが,胸髄には運動ニューロンは少ない。そこで,6匹の成熟ラットにおいて,これらの部位差について,リアルタイムRT-PCRシステムを用いて,ニューロンに関わる各種mRNAの発現量を比較した。 胸髄(T)の発現量を基準(1)とした相対値で表現した結果,成熟したニューロンのマーカー分子であるNeuN(1.83+1.37),α運動ニューロンマーカー分子であるOPN (1.59+0.16),コリン作動性ニューロンマーカーであるChAT(1.53+0.44),γ運動ニューロンマーカー分子であるEsrrg(1.69+0.09)および神経筋接合部関連タンパク質であるAgrin(1.26+0.47)のmRNA発現量は,胸髄に対して腰髄が高値を示した。代表的な神経栄養因子であるNGF(0.75+0.03),BDNF(1.31+0.47),NT-3(0.96+0.002),CNTF(0.72+0.02),CGRP(1.49+0.84)のmRNA発現量は,胸髄との比較において,統計的な有意差を示さなかった。各レセプターであるTrkA(0.88+0.25),TrkB(0.99+0.66),TrkC(1.40+0.40),CNTF-R(1.38+0.70),RCP(0.76+0.53)のmRNA発現量においても,胸髄と腰髄間に有意な差は認められなかった。 以上の結果から,運動ニューロンの含有量の違いに起因すると考えられるmRNA発現量の発現様式の差異が一部確認できた。今後,ニューロンの適応変化に伴う各種神経栄養因子とそのレセプターの発現変化について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に予定されていた実験はすべて順調に終了した。2年目に予定されている2つの実験についてもすでに進行中であり,骨格筋における分析は一部終了し,すでに学会発表を行った。今年度の前半には,脊髄の分析を進める目途が立っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2種類の片側筋損傷実験を行い,脊髄の分析を進める。 (モデル1):ラットの左腓腹筋にブピ バカインを注入し損傷を誘発し,2日また は5日後に左右の腓腹筋および脊髄腰膨大部を摘出する。損傷のない右腓腹筋および 右脊髄と損傷が発生した左腓腹筋および左脊髄においてニューロンマーカー等のmRNA 発現量を調べる。さらに,筋および脊髄においてマイオトロフィクおよびニューロトロフィクファクター,さらにそれぞれのレセプターのmRNA発現量をリアルタイム・RT-PCR分析により定量する。 (モデル2):経皮的に電気刺激を行い左腓腹筋に強収縮を発生させる。同時 に足関節を外力で反対方向に曲げ,強制的にエキセントリックを発生させる。これを100回繰り返し,筋損傷を誘発する。収縮の直後と2日または5日後に左右の腓腹筋および脊髄腰膨大部を 摘出する。以下の分析はモデル1と同じである。
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