本研究は、児童期から青年期を対象にウィルダネス環境下で野外教育プログラムを実践し、特に「ウィルダネス」という場が、体験者の自我や自己にどのように影響を与えているかを検討することであった。 2023年度(令和5年度)は、以下の2つ課題に取り組んだ。 <研究A>ウィルダネス環境下の野外教育として「富士山への集団登山プログラム」を継続対象として、参加高校生の状態-特性自尊感情・ソーシャルサポート・自然に対する態度を明らかにし、「場」の視点から検討することであった。[方法]分析対象27名に、1週間前/1週間後に特性自尊感情(桜井2001)・ソーシャルサポート(細田ら2009)・自然観(福島2022)・富士山に対して抱くイメージ(田中ら2015、8項目)を、直前/直後に状態自尊感情(阿部ら2007)を測定した。また直前/直後/1週間後に省察的自由記述を求めた。[結果]①特性自尊感情は向上した。②ソーシャルサポートは、往路復路間で向上した。特に、対スタッフ・対班メンバー間においては、往路時はスタッフに対して「道具的サポート」を高く認識しており、復路時は班メンバーに対して「共行動」と「情緒的サポート」を高く認識していた。③自然観は、混沌因子のみ有意傾向の変化が認められた。④富士山に対して抱くイメージは、変化は認められなかった⑤状態自尊感情は直後にかけて向上した。 <研究B>ウィルダネス環境に身をおくことで、どのような自然観を醸成していくのかを測定するための尺度作成に取り組んだ。Borrie(1995)が示したWilderness Experience Scaleの6概念(Oneness・Timelessness・Primitiveness・Humility・Solitude・Care)をもとに検討し、692件のデータの因子分析を通して、3因子構造(尊厳・時間超越・一体感)を確認した。
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