研究実績の概要 |
最終年度は、前年度に行った研究2の前半(実験3)の分析と、研究2の後半(実験4)および研究3(実験5)の実施・分析を行った。 その結果、対象者前方のモニタに提示されたターゲットに足圧中心を留める課題(実験3)では、その正確性(ターゲットからの絶対誤差)に対して両手グリップ(合計0.1kg)保持および両手荷重(合計で体重の5%)保持の効果は認められず、対象者固有の運動制御機能の高さと課題難易度の低さが課題として残った。 そこで、実験3の実験設定においてターゲットが連続的に移動する課題に変更した条件で、改めて健常若年成人16名にて検証を行った(実験4)。その結果、グループ全体としては絶対誤差に効果は認められなかったものの、コントロール条件(無荷重条件)で絶対誤差が比較的大きかった対象者では、荷重条件において前後・左右方向の絶対誤差がより減少する傾向が見られた。従って、足圧中心位置の調節機能が低い対象者もしくは難易度が高い課題において荷重負荷が有効である可能性が示唆された。さらに、実験3,4において、身体動揺(加速度)に応じた荷重慣性力の発生が認められたことから、実験1,2と同様に、荷重に発生する慣性力が身体動揺に関する新たなフィードバック情報として利用できる可能性が考えられた。 これらの結果を踏まえ、トレッドミル歩行(快適歩行速度)において軽い荷重を手に持つ効果について、健常若年成人8名で検討を行った(実験5)。その結果、片手に荷重(体重の2.5%)を保持した条件で、左右方向の腰部加速度振幅値(二乗平均平方根)の減少が認められた。一方で、心拍数に変化は認められなかった。 以上の結果は、前年度までの研究成果とあわせて、軽い荷重を手に持つことによるバランス安定効果を示すものである。一方で、運動調節の正確性や運動効率への効果についてはさらなる検証が必要であることも明らかになった。
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