研究課題/領域番号 |
20K11476
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研究機関 | 大阪青山大学 |
研究代表者 |
木下 博 大阪青山大学, 健康科学部, 研究員(移行) (60161535)
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研究分担者 |
中西 康人 大阪産業大学, スポーツ健康学部, 教授 (50622669)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 利き手 / 精密把握 / 力制御 / 道具使用 / 動的・静的運動 |
研究実績の概要 |
本研究では、精密把握運動実験を通して利き手の動的制御機能優位性および非利き手の静的制御機能優位性仮説の検証、さらにその仮説の側性との関係を明らかにすることを目的した。まず本研究実施のための大学倫理委員会審査申請書を作成し、審査を受け承認を得た。次に、実験装置の設計・試作を行った。把握器は、拇指側と対立指の把握力、持ち上げ力、が同時計測可能なセンサ内装の軽量把握器(重量=86g)を試作し、予備実験を通して改良を加えた。また、把握器に小LEDを取り付け、それを浜松ホトニクス社製変位測定カメラで計測できるようにした。さらにテーブル上と前方の持ち上げ後に置く台上での力計測ができる力覚センサー装置も制作した。これらの装置からの電気信号は、増幅後デジタル信号化し、PCにMatlab自作プログラムで取り込めるようにした。これらを用いて3名の被験者で予備実験を実施し、得られたデータをMatlabでの解析用プログラムを用いて分析を試みた。それらに基づき計測装置の調節・修正、解析用プログラムの修正等を重ね、すべてが問題なく稼働することを確認した。これらの過程を経て本実験の一部を実施した。実験は、右利き28名と左利き6名の被験者を用いて左右の手による小物体の持ち上げ・置き戻しの動的課題と空間安定保持の静的課題を実施した。動的課題では、机上の把握器を音合図で拇指と示指で摘み、前方の11.5cm高の台上に置き、次合図で机上に降ろす運動を実施させた。その際、自然な速度と最速の2水準で各左右手8回ずつ繰り返す実験を2試行行わせ、それらのデータを収集した。また、静的課題では把握器を摘み、机上10cm程度持ち上げ、10秒間安定保持の運動を左右手で5回ずつ繰り返す実験を2試行実施させ、課題の最後に物体保持に必要な最小把握力を計測した。、得られた34名分のデータの半分の解析が現時点で終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は、大学研究倫理委員会からの研究実施への承認、実験装置の設計・制作、予備実験の実施、解析用プログラムの作成までは、ほぼ予定通り進められた。一方、予定していた本実験は、大阪府内での新型コロナ感染症の蔓延に伴う活動自粛により研究活動ができない期間が生じたため遅れた。特に、被験者を予定人数集め、実験することができなかった。また、遠隔授業等の準備に追われたためデータの解析も少し遅れた。それに伴い予定していた学会での成果公表もできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず前年度と同様の実験を継続して実施する。特に人数が少なかった左利きの被験者のデータをより多く確保する。それらを含めて前年度の未解析分のデータ解析を終了し、全体での統計処理を行う。さらに、その結果をまとめて国内および国際学会で成果を公表を試みる。また、本年度の新たな実験として把握器の道具化の影響を調べる実験を開始する。まず、そのために現在の把握器前面に小型レーザー光源を取り付け、レーザーポインタ(道具)機能を装備させた改良型を試作し、加えてそのターゲット照射の正確性が計測できる衝立板を作成する。この衝立板には上下10cm幅で2つのフォトダイオード(直径4mm)を固定し、光電圧記録から照射正確度(既定時間内の% 枠内照射)が算出できるようにする。被験者が実施する運動課題は、把握器を精密把握し、持ち上げ保持し第1標的を 10秒間照射し続ける静的課題と持ち上げ後3秒ごとのPC音で別の標的へ素早く移動後、次のPC音まで保持する動的課題とする。左右それぞれの手で、各被験者で動的課題では8回の上下動、静的課題では5回の保持課題を2試行を行う。それらのデータを自作のMatlab プログラムで解析し、標的照射条件とポインタ機能なし(コンロール)条件で動的と静的課題での道具と運動肢の左右差の関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症問題で予定していた国内の学会への参加および共同研究者との研究の打ち合わせ会議のための出張ができなかったため、さらに学内での活動自粛により予定していた実験の一部が実行できなかったためであり、本年度それらを実施する予定である。
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