研究課題/領域番号 |
20K11480
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
久米 大祐 沖縄大学, 人文学部, 講師 (50650628)
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研究分担者 |
西脇 雅人 大阪工業大学, 工学部, 講師 (10635345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神ストレス / 暗算課題 / 動脈スティフネス / 脈波伝播速度 / 心臓足首血管指数 / 有酸素性運動 |
研究実績の概要 |
2020年度は、次の2つの実験を行った。
実験①:これまでの実験結果から、一過性の精神ストレスが脈波伝播速度(PWV)で評価した動脈スティフネスを上昇させることを見出していたが、対象者数が十分ではなかった。そこで、対象者数を増やすために、同一内容の追加実験を行った。実験内容と統合した実験結果は、次の通りである。対象者は、健康な若年男性17名であった。一過性の精神ストレス(5分間の暗算課題)の前後で、動脈スティフネス指標として、心臓-上腕間(hbPWV)、上腕-足首間(baPWV)および心臓-足首間(haPWV)のPWV、さらに、心臓足首血管指数(CAVI)を測定した。その結果、精神ストレスによって、動脈スティフネス指標は有意に上昇し、それはストレス後30分まで持続した。これらの結果から、一過性の精神ストレスは、全身的かつ持続的に動脈スティフネスを上昇させることが明らかとなった。本成果は、European Journal of Applied Physiology誌に掲載された。
実験②:一過性の精神ストレス後の動脈スティフネス上昇を短時間の有酸素性運動によって中和可能かを検証することを目的に実験を行った。対象者は、健康な若年男性13名であった。一過性の精神ストレス(5分間の暗算課題)の後、10分間の自転車エルゴメータ運動(35%心拍予備強度)を行った際の動脈スティフネス指標(実験①と同様)を測定した。その結果、精神ストレスによって、動脈スティフネス指標は有意に上昇するが、10分間、運動を行うことで、ベースライン値に戻った。これらの結果から、一過性の精神ストレス後の動脈スティフネス上昇は、短時間の有酸素性運動によって中和可能であることが明らかとなった。本知見は、European Journal of Applied Physiology誌に掲載受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究活動から、一過性の精神ストレスは、全身的かつ持続的に動脈スティフネスを上昇させることを明らかにした。また、一過性の精神ストレス後の動脈スティフネス上昇は、短時間の有酸素性運動によって中和可能であることを明らかにした。これらの知見は、European Journal of Applied Physiology誌にそれぞれ掲載・掲載受理された。実験実施・論文執筆のペースは、当初予定を上回るものである。しかし、新型コロナの影響により、動脈スティフネス変化の生理メカニズム解明のための測定のセットアップが滞ってしまい、当該測定を実施できなかった。また、実験②で示された運動の中和効果は、自転車エルゴメータ運動によって得られたものであり、基礎データとしては貴重であるが、実生活での実用面に課題があると思われる。以上の理由から、「概ね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
精神ストレス誘発性の動脈硬化を予防する運動プログラムの基盤創出に向け、2021年度以降は、動脈スティフネス変化の生理メカニズム解明とより実用性の高い運動方法の開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、動脈スティフネス変化の生理メカニズム解明のための測定のセットアップが滞ってしまい、当該測定を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。この分は、次年度行う予定である当該測定にかかる費用に使用する。
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