我々は日々の生活の中で歩き方や箸の使い方など様々な運動を学習しながら生活を営んでいる。本研究では、この運動学習能力における神経基盤に関して研究を進めている。本年度は、昨年度に引き続き、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて実験参加者の安静時の脳活動および脳構造画像を計測し、その後、実験参加者にジャグリングの運動課題を学習させた。安静時脳活動では実験参加者が十字の固視点を見ているときの脳活動を約10分間計測した。脳構造画像は、T1強調画像および拡散強調画像を計測した。そして安静時脳活動については低周波変動の振幅(ALFF)、T1強調画像についてはVBMにより灰白質の容積を、拡散強調画像についてはDTIにより白質の解析を行った。またジャグリングの学習成績の指標として総キャッチ数を算出した。そしてALFF、VBM、DTIの脳画像からジャグリングの学習成績が予測できるかどうかCNNを用いて機械学習を行い、モデルの正解率を求めた。学習成績の予測については学習成績に基づいた上位下位の2クラス分類を行った。3D-CNNのモデルとしてVGG、ResNet、Cole-CNN等を用いた。2D-CNNのモデルとしては、事前学習済みのモデルであるResNet50を用いてファインチューニングを行った。その結果、3D-CNNではどのモデルでも有意な正解率は得られなかったが、2D-CNNでは全ての画像に対して有意な正解率が得られ、特にVBMが最も正解率が高った。これらのことから事前学習済みのモデルを用いてファインチューニングをすることで脳画像から運動学習能力の予測が可能になることが示唆された。また安静時の脳活動および灰白質、白質の構造に運動学習能力の予測に関わる情報が含まれている可能性が示唆された。
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