研究課題/領域番号 |
20K11496
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 理 日本大学, 文理学部, 教授 (90245647)
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研究分担者 |
伊佐野 龍司 日本大学, 文理学部, 准教授 (00734112)
青山 清英 日本大学, 文理学部, 教授 (20297758)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 運動観察能力 / 創発身体知 |
研究実績の概要 |
本研究は,保健体育科における教員養成段階の学習者(大学生)を標的とし,学習指導要領の運動領域の内容として示された運動の観察能力形成プログラムを開発することを企図して,次のような手順で理論的・実証的な検討をおこなうことを目的としている.すなわち,第一に,運動観察に関する理論研究をレビューすることを通じて,運動観察能力に関する知見や研究方法論をめぐる諸問題について整理すること.第二に,学習指導要領に記載された内容(知識及び技能)の運動観察能力を高めるための学習プログラムを考案し,実技実習や実技指導法等の授業実践において顕在化する問題を踏まえて実証的に検討すること.第三に,前項1,2を踏まえ,運動観察能力開発プログラムを提示することである. しかしながら,過去数年間に亘るCOVID-19の感染拡大により,本研究の第一段階におけるデータ収集が大幅に遅滞することを余儀なくされ,わずかに,体育専攻学生を対象として,バスケットボールのファストブレイク場面における創発身体知の形成過程を観察・分析し,公表するばかりであった.さらに近年に至っても状況の改善は遅々としており,対面形式の授業はさまざまな制約条件のもとで限定的に実施が認められるに留まってきた.このような状況下に鑑み,さしあたってはオンライン授業において運動観察能力の形成を図るための教材や資料の作成を進め,試験的な運用に基づく基礎データを蓄積してきた. すでに手続き済みのとおり,本研究は2022年度が最終年度であったが,上記事情による大幅な遅滞のため期限の延長をお認めいただき,現在までに集積した基礎資料に拠して,運動観察能力開発プログラム(暫定版)の開発に向けて研究を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去数年間に亘るCOVID-19の世界的・爆発的な感染拡大により,対面形式の授業を前提とするデータ収集等は困難を極め,現在までに実現が叶ったのはわずかに下記の課題に留まっている. 【課題】学習者(教員養成段階の大学生)における運動観察能力の現在値を確認すること. 【目的】学習者の運動観察内容の特徴を明らかにすること. 【方法】①運動指導をテーマとする授業の受講者(体育専攻学生)に当該運動種目の上級競技者の映像を視聴してもらい,その印象や気づいたことについて記述を求めた.②そののちに,同じ映像をスロー再生で視聴してもらい,その印象や気づいたことについて記述を求めた. 【結果と今後の課題】上述①と②の記述内容を比較検討することを通じて,運動質の構成化に関する諸問題が浮き彫りとなった.そこで今後は,「組織的観察法」もしくはマイネルの「運動質のカテゴリー」に基づき観察内容を整理し,個別的・具体的に現前する「図」と,それらの現れの基盤となっている「地」を識別していく.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進にあたっては,過去数年間に及ぶ対面授業における観察・データ収集の大幅な遅滞を挽回し,分析を進めることを最優先課題とする.また,すでに当初の研究期間を延長していることに鑑み,研究成果の取りまとめを可及的速やかにおこない,公表していく方針である.具体的には,次の課題を中心的に取り上げる. 【課題】観察観点提示後の学習者(教員養成段階の大学生)の運動観察能力の現在値を確認すること. 【目的】運動観察についての理論的介入をおこなったのちの学習者の運動観察内容を明らかにすること. 【方法】①運動指導をテーマとする授業の受講者(体育専攻学生)を対象にマイネルの運動質論に関する講義をおこない,運動観察をおこなう際の観察観点を提示する.②当該運動種目の上級競技者の映像を視聴してもらい,その印象や気づいたことについて記述を求める.③そののちに,同じ映像をスロー再生で視聴してもらい,その印象や気づいたことについて記述を求める. 【考察】「組織的観察法」もしくはマイネルの「運動質のカテゴリー」に基づき観察内容を整理し,個別的・具体的に現前する「図」と,それらの現れの基盤となっている「地」を識別する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により,学会等がオンライン開催に切り替えられ,また対面授業が大きく制約されたことによって調査が中止になったことで,当初計画していた旅費(学会発表,調査等)の支出がなかったため,期限の延長を申請して認められ,次年度に繰り越して,主として学会発表や調査等のための旅費として使用することとなった.
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