研究課題/領域番号 |
20K11497
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
永木 耕介 法政大学, スポーツ健康学部, 教授 (10217979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 嘉納治五郎の思想 / 自他共栄 / Diversity |
研究実績の概要 |
2020年度における研究の成果は以下のとおりである。 ①2020年9月9日、横浜2020スポーツ学術会議のテーマ別シンポジウム「オリンピズムと武道(嘉納思想):武道と平和思想の融合」“Olympism and Budo (Kano's Philosophy) :Fusion of the Philosophy of Budo and Peace”においてシンポジストを担当し、“Judo as the thought”という題目で発表した。その発表において、当科学研究費による研究の基礎的段階として収集した「嘉納治五郎にまつわる複数の言説」「柔道/柔術はスポーツではないとする近代オリンピックの主導者・P.クーベルタンの言説」「嘉納によるオリンピック・ベルリン大会(1936年)の国家主義的・政治的あり方への批判」等の史料を活用した。 ②2021年3月7日、2021 Jita-Kyoei International Judo Symposium(主催:兵庫県学生柔道連盟・神戸柔道協会・神戸新聞社、共催:神戸市・日本武道学会柔道専門分科会、テーマ:国際社会において柔道はどのような役割を担えるのか)においてシンポジストを担当し、「嘉納治五郎は世界に何を伝えたかったのか」という題目で発表した。その発表において、嘉納治五郎が創出した「精力善用・自他共栄」の思想を確認し、特に自他共栄は、人種・性・年齢・力(パワー)・環境等の「ちがい」を互いに認め合いながら共に向上していくという理想、今日でいえば “Diversity & Inclusion”の意が込められた格言であった点を主張した。そして、その点は当科学研究費による研究における「柔道とスポーツのちがいを嘉納はどう考えていたか」の基礎的知見となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先に挙げた2つの招待講演を通して、当科学研究費研究の「目的」の「研究1」における「嘉納は柔道のオリンピック採用に否定的であった」という点に関する史料の整理ができた。しかし、「研究1」で示した重要な新しい根拠データについて周辺状況を含めた確認のための国内調査は実施できていない。理由は当該地方が近年において被った地震および大雨洪水の影響がまだ残っていること、さらに新型コロナの感染拡大が起こり、調査者自身が東京都に在住しているため地方への移動と現地調査の実施が憚られたことによる。また、コロナ禍により2020年度前半において各大学の図書館が閉鎖していたことも国内資料の収集に影響した。 また、海外調査についても、当研究テーマに詳しい研究者の居るベルギー、新たな資料収集の可能性があるスイス(IOCアーカイブ)等への調査はやはりコロナ禍により実施できていない(ただし、インターネットを通じた海外研究者からの研究情報は得ている)。
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今後の研究の推進方策 |
まず、国内に残された新しい根拠データの確認を行うために、2021年度内に九州地方への調査を実施する。また、海外調査についても、ベルギー、フランス在住の当研究テーマに詳しい研究者からインターネットを通じて引き続き情報を得ながら、コロナによる状況をみてできれば現地における調査活動を実施したい。それが可能となれば、それを足掛かりとしてスイス(IOCアーカイブ)等への調査を実施し、2022年度に研究成果をまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当科学研究費研究における研究目的の「研究1」で示した重要な根拠データについて周辺状況を含めた確認のための国内調査ができなかった。理由は当該地方が近年に被った地震および大雨洪水の影響がまだ残っていること、そしてコロナの感染拡大があり、調査者自身が東京都に在住しているため地方への移動と詳しい調査の実施が憚られたことによる。 次年度は、この国内調査を実施するとともに、ベルギー、フランス在住の当研究テーマに詳しい研究者からインターネットを通じて引き続き情報を得ながら、コロナによる状況をみてできれば現地で調査活動を実施したい。
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